梨の受粉と自家不和合性との関係について紹介します。
自家不和合性とは?
梨には自家不和合性という性質があり、同じ品種同士を植えてる場合や1本の樹だけしか植えていない場合では果実をつけません。
自家不和合性はS遺伝子というのが関係しています。
幸水や豊水、新高などそれぞれS1遺伝子やS2、S3遺伝子などを保有しており、S1遺伝子(Sの後の数字が一緒の遺伝子)を保有する品種同士では受粉がうまくいかず、受精をせず、果実をつけれないのです。
受粉しても花粉管が伸長せず、ストップしてしまい受精にいたらなかったりするそうです。
ですので、梨の苗木を購入する際は何の遺伝子を持つ品種かを調べる必要があります。
※苗木屋さんのカタログに載っています。
自家不和合成のS因子型
因子型 | 品種 |
---|---|
S1S2 | 赤穂、独逸、早玉 |
S1S4 | 八雲、翠星 |
S1S5 | 明月、市原早生 |
S1S6 | 今村秋 |
S2S3 | 長十郎、青長十郎、青竜、武蔵 |
S2S4 | 二十世紀、六月、早生長十郎、菊水、祇園、早生二十世紀 |
S2S5 | 須磨、駒沢、愛宕 |
S3S4 | 筑水 |
S3S5 | 丹沢、豊水 |
S4S5 | 早生赤、太白、幸水、新水、旭、多摩 |
S5S7 | 晩三吉 |
調べた後、数種類の品種を購入して混植するのがオススメです。
これは梨だけではなく、他の果樹でもいえます。
自家和合性について
桃やスモモなど自家和合性(自家不和合性の反対で、一本の樹•同じ品種でも果実をつける。)を持つ品種があります。
桃では あかつき (当園でも栽培してます)が自家和合性で、一本の樹でも結実します。
最近では自家受粉が可能な梨の品種が登場しました。
・ニホンナシの主要品種では、自らの花粉では結実しない自家不和合性1)という性質があり、他の品種の花粉を用いた人工受粉が必要です。そこで、自らの花粉で結実する自家和合性のニホンナシ新品種「なるみ」を育成しました。
・「なるみ」は「豊水2)」と同時期に成熟する中生の良食味品種であり、人工受粉の省力化が可能な品種として全国的に普及が期待されます。
この「なるみ」を元に品種交配を重ねて美味しいかつ自家受粉が可能な品種が登場したら最高です。
現場での花粉の調達
生産の現場では昨年貯蔵した花粉を使用したり海外産の花粉を購入して受粉に使ってます。
菊水の花粉を採取して今年使用するパターンが多いかと思います。
花粉の採取および精製~保存などかなり時間を取られます。
この時期は摘蕾作業やブドウの管理などもあるので花粉の採取の作業が中々厳しいです。
また、1日かけてかなり頑張っても40gくらいとかザラです。さらに花粉を精製する道具類も高価です。
なので花粉は海外産の輸入花粉をメインに使用しています。
ただ花粉はとっても高価です。10gで数千円。増量剤の石松子(せきしょうし)を混ぜて受粉作業をします。
花粉を精製する手間暇を考えると、高すぎとは言えませんが、、安くはありません。
花粉精製につかう道具
開葯器と花粉精製機、採葯器などで30万を超えますね。
このほかにシリカゲルやヘキサンも必要です。
ただ上の道具を揃えたとしても1年に数回しか使わないため、花粉は購入したものを使っています。
もちろん広大な面積を栽培している場合は自分たちで採葯した方が結果として安いかと思います。
受粉作業の道具
受粉作業に使用する道具は、コロンブスやラブタッチなどがあります。
生産面積に合わせて選びましょう。
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ちなみに 花粉混合器 まぜーるM がラブタッチを使用する際に推奨されています。
WEBで調べてもなかなかでてきません。
作業に役立つ道具の紹介も下記のリンクでしています。
また、受粉の時間帯や開花期頃の病害虫対策については下記に記載しています。
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