木が老齢化すると枝も出にくくなったり、病気(萎縮病など)が発生して主枝を切り落としたりします。それでもダメなら気の入れ替えのために抜根をします。
また、突発的に木が枯れてしまうこともあります。その原因が白紋羽病です。
白もんぱが出てしまった際は、地中を伝わって他の木も枯らせてしまう恐れがあるので抜根をします。
その際の抜根の方法などを解説します。
梨の抜根の時期
抜根の時期は他の木へのダメージが少ない、休眠期(11月下旬〜2月下旬)頃に行います。
実のところ抜根する木が密集地帯に無ければ、他の作業との兼ね合い次第でいつでも問題ありません。
果樹の抜根の方法・手順
抜根予定の木を中心にして半径2〜5mを掘り上げます。この時の半径は木の大きさによって変わります。
木が大きいほど根っこが広範囲に広がっているので、それらを全て掘り起こします。
抜根の注意点で、雨の中やらないのと、雨の後すぐにはやらないことです。雨によって土がかなり重くなるので負荷が増大して、事故が起きる可能性が出てきます。
①逃げ道を作っておく
掘るときは必ず逃げ道を作っておきます。掘り方としては『コの字』に掘ります。
状況により異なりますが時計周りに掘っていき、最後は足場を確保して株を掘り上げます。
最後の足場部分まで掘ってしまうと株からだいぶ離れた位置から株を掘り上げることになるので、踏ん張りが効かずにうまく掘り上げることができなくなります。
また、木が密集している場合もちゃんと逃げ道(後方)を確保しておかないと、株を掘り上げてバックしようとしても後ろに木があった場合は後退できなくなります。
なので最初にコの字となる逃げ道の部分を考えて、掘り進めましょう。
②一番外側から掘っていく
掘る範囲を決めたら、一番外側から掘っていきます。いきなり中心(株)を掘ろうと思っても根っこが張り付いているので、いきなり木を引っこ抜くことはできません。
無理に引っこ抜こうとすると、バックホーが小型だと横転する恐れがあるので無理はしないようにしましょう。
ただ、上の画像のように枯れてから年数が経っていた場合や、白門羽によって根っこがボロボロの場合は割と簡単に引き抜けます。
一番外側を深さ1〜2m(木によって深さは異なる)掘ったら、隣の列でまた同じ深さを掘ります。バケットの幅は40〜50cmくらいなので、50cm幅を掘ったら隣の列も50cm掘って、株付近になったら掘るのをやめて、掘る位置を変えます。
株の付近は太い根っこが多いので、無理に掘らなくて問題無いです。
③少しづつ掘っていく
掘るときは、バックホーのバケットに収まるように少しづつ掘っていきます。
同じ場所をケーキのミルフィーユを1枚1枚剥がすように掘り進めます。(バームクーヘンを1枚ずつ剥がす感じです)
一気に深く掘ろうとすると、負荷がかかってバックホーがひっくり返る恐れがあるので注意。
掘っている途中に太い根っこなどに当たった場合、無理して掘ろうとするとこれまた負荷がかかって危険なので注意しましょう。
④根っこは全て回収する
地中に根っこが残っていると、それが白紋羽の病巣になってしまいます。可能な限り根っこは全て回収します。
⑤埋め戻す時は少しづつ押し固める
根っこなどを全て回収したら今度は掘りあげた土を埋め戻します。
可能なら埋め戻さずに1年間そのままにするとモンパの菌が減少します。
ただ、最近の研究では土を埋め戻してそのまま1年間何も植えなければ、菌の数は減少していくと言う研究結果があります。
土の埋め戻し方は、掘りあげた土を1/3づつ穴に戻して、バケットで押し固めるのを繰り返します。徐々に押し固めずに一気に土を戻してしまうと、後に掘った部分がフカフカになり、雨が降った時に沈降しまいます。
なので1/3づつ埋め戻す&押し固めるのを繰り返します。最後にキャタピラーで踏んで押し固めると完成です。
白紋羽病とは?
画像の白い部分が白紋羽の菌※白モンパは好気性菌
白紋羽(通称:モンパ)とは地中に枯れた枝や根っこが存在すると、そこに住み着き増殖し健康な木にも害を与えます。
症状としては、急に樹勢が悪くなり開花時期に花が咲かなかったり、新梢の生育や出が悪くなったり、落葉が始まってしまいます。その後、対策を取らないと数年後に確実に枯れてしまいます。
モンパは放置しておくと枯れた木から他の正常な樹に伝染してしまうの要注意な病気です。木の樹勢が悪くなったらまずこの病気を疑いましょう。経験からして罹りやすいのは老齢の樹や若木でした。
健康な木がモンパにかかると枯れてしまうので、数年〜十数年間手間暇かけて育てた時間が失われます。果樹農家が一番恐れている病気です。
白紋羽(しろもんぱ)病の対策
天地返し
穴を掘った後、天日に晒して約1年間そのままにします。そうすると菌が減少するので1年後に埋め戻して、苗木を植えられます。
そのまま土を埋め戻しても良いのですが、1年間は何も埋めないようにしましょう。徐々に菌が減少していきます。
土中消毒
フロンサイドSC(農薬)を土壌注入機で木の周りに打ち込み、土の中に注入します。
土壌注入機は液のみが注入される ポアーノズル(液肥注入機)S型(G1/4) を使用します。白モンパは好気性菌(酸素で増殖する)ですので、液のみが入る注入機を使用します。
可能ならフロンサイド専用のモンパ奉行が良いですがポアーノズルでも十分対応可能です。
このやり方では感染が早い段階で分かっていれば、木を保護することが可能です。
また、土壌注入機のネジはG1/4なのでボールコックG1/4と、ワンタッチカプラー(A)G1/4を取り付けることで、スピードスプレイヤーなどにも取り付け可能になります。
必要な資材
参考資料
温水消毒
モンパが感染している木の周りを約50℃の温水で点滴潅水することで地温を30~45℃にします。
そうすると菌だけ殺菌して木を守ることができる消毒方法です。
参考資料
牡蠣殻を投入する
牡蠣殻にはキトサンという物質があり、モンパと敵対する菌が好んで食べるため、その菌が増えることでモンパが増えにくくなります。
拮抗作用と言います。