
切った後を確認することで、来年はこうしたら改善できるなど復習できるのでオススメです。
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梨の花芽と葉芽の違いとは?

花芽と葉芽の見分け方
剪定の基礎となる花芽と葉芽の見分け方です。文字通り、『花芽は花と葉をつける芽』で『葉芽は葉だけをつける芽』です。花をつけるということは将来は実をつける芽になります。この見分け方が分からず、葉芽ばかりの枝を残してしまうと実が付かない『タダの枝』になってしまうので注意しましょう。
花芽の基本的な見分け方は、その芽がふっくら大きいかどうか?です。上の比較画像で示すとおり、花芽はふっくらしていて葉芽はぺたんこです。この違いで判断します。
芽の種類
花芽
夏に伸びた枝(新梢)につく花芽です。コレが沢山ついている枝を長果枝としてよく使います。
鬼芽
徒長枝(太かったり、伸びすぎた樹勢が強い新梢)によくついている花芽なのですが、あまり良い花をつけないので良い実がなりにくいです。特徴は葉芽よりも大きいが、尖った形をしている様が鬼の角に似ているので『鬼芽』と呼ばれています。
短果枝
2年目の枝につく花芽。短果枝は普通の花芽(長果枝)に比べて芽の養分が充実しているので、良い果実をつけやすいです。待ち枝に良くつきます。
右の画像の○の凹みは昨年に果実をつけた跡(果軸が付いていた箇所)です。
中果枝(短果枝群)
短果枝を長く使っていると画像のように短果枝群(中果枝)になります。3年以上使っている古い枝に良くつきます。この芽も短果枝と同じで充実した花芽なので良い果実をつけます。別名で、ショウガのような形から『ショウガ芽』とも呼ばれます。
葉芽
葉芽です。花芽に比べると小さいのが特徴です。これが沢山ついている枝は予備枝や待ち枝で使うことが多いです。
帯状花芽
たまにある奇形の枝と花芽です。花芽が帯のように連なっているため『帯状花芽』と呼ばれています。枝が変形しているものが多く扱いづらいため、あまり使わない(残さない)枝です。
梨の病気の枝・枯れている枝の判別

生きている枝・枯れている枝の判断方法
生きている枝は茶色で切断面は薄緑色です。逆に枯れた枝は表面が真っ黒になり、切断すると中が薄緑色では無く肌色です。枯れる原因は胴枯れ病や萎縮病、モンパなどがあります。枯れている枝はパッと見で判断できるので、見つけたら先に剪定して除去しましょう。
カイガラムシの被害枝の対処法
カイガラムシが密集していると新梢(枝)の伸びや花芽に悪影響が出ます。上記の画像はカイガラムシによる被害枝で、枝の表面がデコボコになってしまっています。しかし、枝としては使えるので枯れてしまった芽などを除去すれば問題ありません。
梨の結果枝の剪定の基本

長果枝の剪定方法
1年生の長果枝の剪定は、まずは花芽と葉芽を確認して花芽が多いのを結果枝として使います。ですが、花芽が少なくて葉芽ばかりの枝を残すと実が全く付きません。
そもそも葉芽は葉っぱしかでない芽なので果実をつけることができません。なので、ふっくらとした花芽が多い枝を結果枝として使うのです。
葉芽ばかりの枝は後述しますが、待ち枝や予備枝として使用します。そして、昨年伸びてくれた一年生の長果枝の切り方は【先端を少し切り戻す】です。ポイントとしては先端が上向きの芽になるように剪定します。

花序と言って梨の花芽の付き方には【上芽→下芽→右芽(左芽)→左芽(右芽)といった順番】があり、この順番が開花期になると重要になってくるからです。
上のように冬に上芽(上向きの芽)が先頭になるように剪定したので、④の画像のように新梢が直上方向へと伸びやすくなり先端まで養分を引っ張ってくれます。
また、先程伝えた【花序】に従い上芽の次は下芽のため下芽は摘蕾で落とすので収穫量に影響を与えません。※新梢を伸ばすために先端2つの摘蕾は必須
先端まで養分を引っ張ってくれる事で、その途中にある果実に均等に養分が行き渡り均一な美味しい果実が出来ます。これが先端の芽が病気で死んだ場合などすると、新梢の途中の上芽が強くなってしまうので枝として歪な形になってしまい、根元から新梢が多数伸びている『クシ状枝』になります。
そうすると均等に養分がいかないので果実はもちろん、その歪な形の長果枝は来年の結果枝として使いにくくなり、場合によっては根本から切る必要があります。そのクシ状の枝になるのを防ぐために、先端の芽は上向きの強い芽にするのです。
注意したい点は、いくわ上向きの先端の芽を残したとしても、先端にいくにつれて枝が細いときは上向きの芽の役割を果たせません。なので枝が太いところかつ上向きの芽のところで剪定をするのが理想です。
また、先端の新梢が伸びるだけならその伸びた新梢を切り戻すだけで済むので、綺麗な形の結果枝として2〜3年ほど使い続けられます。
メモ
- 先端が上芽になるように少し切り戻す。
- 結果枝として使えるかどうかは花芽の数を確認する。
古い結果枝(短果枝群)の剪定方法


①先端の剪定
まずはじめに枝の先端の剪定についてです。
こういった年数の経過した結果枝は立ち上がりの先端を短く切って新梢を勢いよく出させます。
また、開花時期には先端は引っ張り枝として養分を引っ張らせる役割に使うので摘蕾をします。
②中果枝の剪定
次に、枝についている短果枝群の剪定について。
枝の中間にある短果枝は花芽を1つにすることで、開花時期にする摘蕾・摘果の作業を省力化できます。
冬に中間にある短果枝の芽を1つになるように整理したので、その後の作業【摘蕾・摘果】の手間が減るので作業効率がUPします。
メモ
- 先端の立ち上がりの部分(枝もしくは短果枝)は短く切り戻す。
- 枝の途中にある短果枝群は花芽を1つにする。
結果枝の誘引について
実をつける枝は、棚にしっかりと紐やテープナーで誘引します。
棚に水平に固定することで強風が吹いても枝がバサバサと揺れるのを防げます。
そうすることで、果実が落果したりキズや擦れを防げるので、見栄えの良い梨が生産できます。
枝の根元もなるべく棚に水平に誘引します。
根元が浮き上がった状態だと、枝の高い位置から出る新梢の勢いが強いため、
養分が高い位置に集まってしまい、結果枝の先端まで養分が届かなくなります。
そうなると果実に行き渡る養分が偏ってしまうため、その枝の中で収穫できる梨のサイズにバラツキが出てしまいます。
極端に言うと、先端はS玉だけど、高い位置・根元に近い位置は5L玉など。
なので結果枝は勾配をつけずに、水平になるように棚に誘引をしましょう。
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不要な枝の剪定方法
古い枝や太くなった不要な枝を無くす際は、根元の下の部分を出っ張らすように(かつ上部は残さない)剪定することで、下部から新梢が出てきやすくなります。
これが上部にでっぱりが残るとそこから芽が出やすくなり、直上枝になりやすくなってしまいます。
直上枝になってしまうと誘引の際に折れやすくなりますし、花芽の付きもイマイチになってしまいます。
逆に下部から出た枝は冬に誘引がしやすいメリットがあります。

そこには潜芽(せんが)といって芽が潜んでいます。

上の画像が下部を残すように剪定した結果、枝が出てくれた様子です。
上の枝が理想の状態です。
メモ
- 根元は下部を出っ張らすように剪定する。
- 潜芽がひそんでいるシワを残すように剪定する。
枝の根元の芽欠き
枝の根本近くの芽は、成長が強くなってしまい徒長枝になりやすいため必ず芽欠きをします。
芽を欠かないとそこに養分が取られてしまうので先端の芽の成長が阻害されてしまいます。
これは結果枝・待ち枝・予備枝全てに共通するので、先端を伸ばしたい枝の根本は全て芽欠きをします。


芽欠きの動画



ノコ芽
ノコギリで切りつけて芽を出させる技術のことで通称【ノコ芽】と呼んでいます。
古い枝などで根元から中々新梢が出なかったり、これ以上その枝が太くならないように(かつ勢いを弱めて短果枝をつけたい)したい場合に根元に切れ込みをいれます。
すると切れ込みのところが養分の流れを止める役割を果たし、その下から新梢が出やすくなります。
梨の枝の根元付近の【しわ】には隠れている芽【潜芽(せんが)】あるのでその上で切ることで、その芽を刺激して芽を出させる意味もあります。
この出た芽が順調に育ってくれたら来年の結果枝または予備枝として使います。
メモ
- 根元から芽を出させたいときは【しわ】の上に切り込みを入れる
- 根元から新梢を出させたい時や、枝が太くてこれ以上太らせたくない樹勢が強い枝に対して行う。
切り口には保護剤を塗る


切り口から菌が侵入して①のように枝を枯らせてしまいます。
それにより収穫量が減ってしまうので、菌の侵入防止のためにも切り口には保護剤を塗りましょう。
また、胴枯れ菌が果実に侵入すると芯腐れ病になります。
保護剤の種類
保護剤にはトップジンMペーストとバッチレートがあります。
トップジンMペーストはボンド、バッチレートはペンキのような塗り心地です。
また、トップジンMペーストを薄めることでブドウの黒とう病対策につかえます。
葉芽ばかりの梨の枝の剪定方法


葉芽ばかりなので、そのまま棚に誘引しても果実はつかないため来年1年間は養分を蓄えさせます。
そうすることで再来年に結果枝として使う剪定方法になります。
待ち枝
待ち枝とはあえて長い枝のままの状態で残して(結果枝のように先端は少し切り戻す)角度を30〜45°くらいに誘引します。
そして、この年の花や果実は全て摘蕾·摘果で落とすことで、短果枝をシッカリつけさせて来年の結果枝として使う枝になります。
待ち枝に使う枝は【1年生の花芽が少ないor花芽が無い長果枝】を基本的に使います。
長めの予備枝と考えてもらえればOKです。
誘引の角度について
誘引角度を30〜45°にする理由は、水平だと枝の途中から強い新梢が出てしまい枝が歪んでしまうからです。
また、誘引角度を60°などにすれば先端が強くなり途中の新梢が伸びずに短果枝になりやすいのですが、
今度はその枝が太くなるので翌年の誘引が物凄くしにくくなります。
なので短果枝がソコソコ着きやすく、かつ誘引もしやすい角度が30〜45°になります。
ちなみに剪定方法は、先端が上芽もしくは横芽になるように少しだけ切り戻します。
メモ
- 先端の芽が上芽もしくは横目になるように少しだけ切り戻しをする。
- 誘引角度を30~45°に誘引する。
- 待ち枝につく花・果実は全て摘蕾・摘果して、養分を貯蔵させる。
また、品種によってですが待ち枝にせずに今年実をつけさせてしまうと、短果枝にならずにハゲてしまうことがあります。
詳しくは【はげ芽の対策】で解説しています。


はげ芽の対策
一般的に梨の枝は光が当たり養分が供給されていれば、左の画像①のように一度実をつけた所に花芽がふたたびつきます。
しかし日陰になったり栄養状態が悪かったりすると、右の画像②のように花芽がつかず芽が枯れてしまいます。
それを果樹農家では【はげる】と呼んでいます。
特に品種としては【あきづき】がこうなり易いため、あきづきの剪定では待ち枝を多用します。


予備枝
予備枝は結果枝として使おうにも花芽が少なく枝が細くて使え無い場合、強めに切り戻してそこから強い枝を出させる方法です。
おおよそ15cm位の長さに切り戻します。
強く切り戻すとその分、勢い良く新梢が出てくれます。
誘引角度は可能なら45°位にして先端の新梢を強く出させます。
2年目の予備枝

上の枝は予備枝として出させたものの、思ったより良い枝が出なかったのでもう1年予備枝として使った枝になります。
切り戻す場合は前と同じ枝の長さかそれより少し短めに切り戻します。
強い枝が出なかったのは切り戻しの長さが足りなかった事が原因の1つなので、もう少し短く切り戻します。
メモ
- 予備枝は15cmほどに切り戻す。
- 角度は45°に誘引する。
梨の様々な剪定方法と剪定技術

梨の剪定には様々なルールがあります。
それを習得することで、継続的に収穫量を上げ続けることができます。
首の皮一枚切り剪定
若木などの骨格枝をつくっている時などは根元からどうしても樹勢の強い枝が出やすくなります。
可能ならそういった枝は根元からバッサリと無くしたいのですが、葉枚数を稼ぐためにあえて残す場合があります。
そこでその枝がこれ以上太くならないようにする技術が【首の皮一枚切り】になります。

上のように枝を少し残してくり抜いてテープでぐるぐる巻きにすることでその枝は枯れず、かつ葉枚数を稼ぐことができるので若木の成長を促せます。
また、上の画像では根本から芽が出てくれたので来年の予備枝か結果枝として期待できますが、この芽が出なかった場合はこのくり抜いた枝を来年の結果枝として使うパターンもあります。
ただし、この剪定方法をした場合は切り口をビニールテープでしっかり巻きます。
ビニールテープを巻かないと、切り口が大きいので雨水を介して胴枯れ病にかかって、枝が枯れる場合があります。



メモ
- 枝を太らせたくない場合に使う技術
- 葉枚数を稼ぐときに使う。
- 切り口は雨水が入らないように、ビニールテープでしっかり巻く。
弓なり枝
側枝に花芽が少なく長めの短果枝がついている場合に、弓のように誘引します。
こうすれば、少しでも収穫量を上げられます。
また、摘果時期には弓なり枝の先端の1果のみ残し、他は摘果します。
弓なり枝は細い枝なので2個も3個も果実を実らせると、枝が折れてしまうからです。
徒長枝・直上枝の剪定
徒長枝・直上枝は基本的には、コブを残さずに綺麗に剪定します。
コブを残してしまうと、切り残しから新梢が出てしまい、直上枝が増えてしまいます。
直上枝が増えると、そこに養分が集中してしまい、他のところから枝が出にくくなってしまいます。
しかし、他に枝が無い場合は直上枝や徒長枝を無理矢理使う場合もあります。
結果枝として使う場合
枝にキズを入れて稔枝(ねんし)をします。
直上枝を無理矢理折って、棚に寝かせて結果枝として使う方法になります。
梨の枝は強いのでビニールテープを巻けば、雨水の侵入を防ぐ=菌の侵入を防げるので、枯れずに癒合してくれます。
他に枝が無い場合の緊急手段になります。
梨の稔枝の動画
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剪定鋏
オリジナルライオンの剪定鋏 No.7107 と専用ケースです。アンビル型+バイパス型のハイブリッドモデルなので切れ味鋭く、少ない力でスパッと切れるので腱鞘炎の人におすすめ。
ノコギリ
サムライのノコギリです。曲刃になっていて枝にひっかかりながら楽に剪定でき、ゆっくりノコギリを引くだけで枝が楽に切れるので腕が疲れにくいです。果樹の剪定なら刃がやや硬めの青色のチャレンジがおすすめです。
結束誘引機
新発売した新型テープナーです。過去のテープナーを改良して、反発力が強い枝を誘引できるようになりました。
過去のテープナーでは枝を誘引して、その時は棚に留められていても強風で結局外れてしまいました。しかし、この新型 MAXテープナー HT-S45Eは強保持力で新しくなったテープには繊維が編み込んであるので、超頑丈になりました。そのおかげで強風でも外れることはありません。
誘引紐とアイアイカッター
誘引紐は麻ひもを使っていますが、若木では食い込んでしまいます。このクラニロープは、太く柔らかい素材なので枝に食い込まないので重宝しています。
また、紐を切るときは指につけられるリングタイプのカッターが便利です。誘引しながら指にはめたカッターで紐を簡単に切れるので、紐を切るときに剪定鋏を取り出す必要がありません。紐を切るとき、いちいち剪定鋏を取り出す必要がなくなるので、誘引がかなり楽になります。
幹割り鋏
梨の稔枝(ねんし)が楽になる鋏です。稔枝をするとき枝にカッターや剪定鋏でキズを入れますが、この鋏を使えば一発で簡単に割りを入れられます。一丁あるとなにかと便利です。太い徒長枝を無理矢理曲げる時によく使います。
切り口の保護剤
トップジンペーストはボンド、バッチレートはペンキのような使い心地です。効果はほぼ同じですが、トップジンペーストの方はブドウの黒とう病対策に使用できます。
電動剪定鋏
購入はしていないのですが、使わせてもらった感想です。
剪定がものすごく楽になります。パワーがあるので枝が面白いくらいザクザク切れるので剪定のスピードがかなり上がります。マキタの電動剪定鋏はバッテリーが互換性があるので、マキタシリーズを持っている方におすすめです。マックスのザクリオは1日一回フル充電するだけで、余裕でバッテリーが持ちます。
コードレス電動剪定鋏
コードレスタイプの本格仕様の電動剪定鋏です。LOWE ライオンの剪定鋏を販売している和光商事が取り扱っています。コード付き電動剪定鋏のザクリオなどに比べるとパワー不足は否めませんが、細かいところの剪定作業にはとても使いやすいそうです。
梨の剪定方法を画像で解説|まとめ

もちろん品種やその木の樹勢、土壌によって剪定方法が適宜変わってきますので一概にコレ!とは言えません。
少しでも参考にしていただければ幸いです。
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