梨のコンヒューザー(交信かくらん剤)、つまりフェロモンを出すトラップを設置して
シンクイ虫の交尾を阻害して被害を減らす資材になります。
5月以降にナシヒメシンクイは増加していくのでコレを設置して被害をさらに減少させます。
具体的な設置時期とナシヒメシンクイの発生について解説します。
先に結論!
- 交信かく乱剤は園の外周に重点的に設置する
- 交信かく乱剤は6月上旬+7月上旬(追加)で設置する。
- また、交信かく乱剤はあくまで補助なので慣行防除は徹底して行う。
シンクイ虫の被害と発生時期
ナシのシンクイ虫は蛾の一種でナシ畑などに飛来し交尾して卵を産み付けます。
孵化して幼虫がナシの果実や葉っぱを食い荒らして被害が拡大します。
- 幼虫は5月~6月にかけてナシの新梢に食入し、心折れの被害を引き起こします。
- 5月~6月の時期の被害は軽微なものですが、ときに結果枝の先端の軟らかい部分に食入し内部を空洞化するため、強風等により枝が折れやすくなります。
- 7 月以降になるとナシの果実を食害します。果頂部から侵入することが多く果頂部に細かい虫糞を出します。
シンクイ虫の被害果
果頂部(お尻)のところから虫くそを出すので被害が分かりやすいです。
被害にあった時点で廃棄になってしまいます。
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ナシヒメシンクイの発生条件と時期
- 気温が高く降水量が少ないと発生がしやすくなり、発育期間も短くなる。
- ナシ園の近くにある放置園などが発生源となる。
- 世代を重ねるほど虫の密度が高まってくるので、収穫期の遅い品種ほど被害を受けやすくなる。
- 老齢幼虫がナシやモモなどの粗皮の下や間隙に薄い繭を作って越冬します。
- 越冬幼虫は3月頃に蛹化し始め、成虫は4月頃から発生します。
- 越冬世代成虫は、ウメなどの葉裏や新梢に産卵しますが、近くにウメ等が無い場合にナシの新梢や結果枝に食入することがある。
- ナシ果実に産卵し被害が生じるのは、7月以降に現れる第2世代以降の幼虫。
ココがポイント
つまり6月中に発生する第一世代の発生を減らせば、
収穫時期に甚大な被害を及ぼす第2世代以降の幼虫の発生を抑制できます。
神奈川県のナシヒメシンクイの発生と対策
上の画像は過去のデータです。
5月下旬頃から増加してピークを迎えて、その後に7月中下旬頃から増加して9月まで高い発生率になっています。
収穫時期の8月中旬頃がシンクイムシの被害が多発するため、それ以前の6月下旬までには交信撹乱剤を設置して交尾を防止しなければなりません。
交信かく乱剤は3ヶ月残効があるので、
6月上旬に設置することで9月上旬まで効果が継続される計算になります。
豊水などの8月下旬~9月上旬ころに収穫できる品種に対しては、
交信かく乱剤を追加で7月上旬頃に設置すると抑制効果が長続きします。
品種によりますが8月中旬~9月上旬位が収穫のピークなのでちょうどピンポイントで良いかと思います。
重点防除時期
発生状況によりますが、重点防除時期は7月中旬・8月中旬・9月上旬です。
また、例年8月中旬にナシヒメシンクイの被害が多い場合は、
7月末か8月頭に残効性の長い農薬、フェニックス、モスピラン、ディアナWDGなどを散布するとより被害を抑えることができます。
関連薬剤
ナシヒメシンクイの発生情報(神奈川)
発生状況が掲載されているリンク先です。
交信かく乱剤(コンフューザーN)の詳細
機能
性フェロモンの特異的作用によって対象害虫の交尾を連続的に阻害し、
害虫の発生を抑制することを目的としているので直接の殺虫作用は無い。
- 殺虫剤への感受性が低下した害虫にも有効。
- ハマキムシ類の成分をできるだけ天然組成に近づけることにより効果が安定。
- 天敵に対する影響は非常に少なく人畜毒性もほとんどありません。
- 本剤の有効成分は微生物等により容易に分解されるため環境にやさしい。
- ディスペンサーがツインタイプのため枝等に簡単に取り付けられます。
- 殺虫剤の散布回数の削減が期待できる。
- 作物への残留も心配なく作業者に対しても安全です。
コンヒューザーNの残効期間と設置時期
気象条件などいろいろありますが、残効期間はおおよそ3ヶ月弱と考えれば良いと思います。
設置時期
- 6月上旬【第一世代の抑制】8月上旬~8月中旬に収穫できる幸水などの保護が目的
- 7月上旬【第二世代の抑制】8月下旬~9月上旬に収穫できる豊水などの保護が目的
1回目の第一世代の抑制が最も重要です。その後に追加で7月上旬に設置するとさらに効果があります。
適用害虫と使用法
作物名 | 使用目的 | 適用害虫名 | 10㌃あたりの使用量 | 使用時期 | 使用方法 |
---|---|---|---|---|---|
果樹類 | 交尾阻害 | ナシヒメシンクイ | 50~200本 (52g/200本製剤) |
成虫発生 初期から 終期 |
ディスペンサーを対象作物 の枝に巻き付け、又は挟み 込み設置する |
モモシンクイガ チャハマキ チャノコカクモンハマキ リンゴコカクモンハマキ リンゴモンハマキ |
150~200本 (52g/200本製剤) |
||||
スモモ | スモモヒメシンクイ | 200本 (52g/200本製剤) |
交信かく乱剤の設置場所
本剤を10アール当り150~200本とし、圃場の立地条件(傾斜)、周囲の状況や風向き等を
考慮に入れて、8割程度を圃場全体にほぼ均等に設置してください。
残りの2割程度を圃場の周辺部に処理すると効果的です。
と書いてありますが、圃場の外周をメインに配置します。
中に設置してもヒメシンクイは動き回るだけなので、外側に配置する事でそこに誘引して動きを止める役割をします。
《交信かく乱剤を設置》すると、人工的に合成された性フェロモンによって惑わされたオスは、どれが本物の匂いか分からずデタラメに飛びまわりメスにたどり着けません。
その結果、交尾ができず、次世代の害虫の発生を防ぐことができます。
このような現象を交信かく乱といい、交信かく乱を目的とした商品を「交信かく乱剤」といいます。
「微量で効く(誘引する)」という性フェロモンの特徴を逆手にとり、
合成した人工の性フェロモンを大量に充満させて、虫の誘引を邪魔しています。
交信かく乱剤は、農薬取締法に基づき「農薬」として登録を受けていますが、
毒性が極めて低く有機JASでの使用が認められています。
交信かく乱剤【日本生物防除協議会】
つまり圃場の外周に設置して誘引しそこに本物がいると錯覚させ交尾をさせないようにします。
なので外周に重点的に設置するのです。
まとめ
交信かく乱剤はあくまで補助的な役割であり、100%防げるものではありません。
なので交信かく乱剤を使いつつ通常の防除体系で行っていくのが被害を減らせる方法になります。
チェックポイント
- 交信かく乱剤の設置時期の1回目は6月上旬【第一世代の抑制】8月上旬~8月中旬に収穫できる幸水などの保護が目的
- 交信かく乱剤の設置時期の2回目は7月上旬【第二世代の抑制】8月下旬~9月上旬に収穫できる豊水などの保護が目的
- 交信かく乱剤の残効期間はおよそ三ヶ月間
- 交信かく乱剤は圃場の外周をメインに設置する
- 6月中に発生する第一世代の発生を減らせば、収穫時期に甚大じんだいな被害を及ぼす第2世代以降の幼虫の発生を抑制できる。
- シンクイムシの重点防除時期は7月中旬・8月中旬・9月上旬
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