ブドウの種からの育て方を紹介します。
今回やるのは実生選抜と言って、とりあえず沢山種を蒔いてそこから良いものを選んでいくやり方です。
蒔いた種が発芽した時点で生育の良いものだけを残します。その時点で生育が悪いと、木が成長した時に樹勢が弱いブドウが出来上がります。
実際に私が育てている『育種①号』は樹勢が弱すぎるので収量が低く、房型もなかなか形になりにくい、さらに接ぎ木で増殖しにくい点があげられます。
樹勢の強さ(強すぎるのはそれでダメですが、花芽がつきにくいので)はかなり重要な要素です。
\ 種の発芽促進や接ぎ木に!/
ブドウの種の採取時期
種の採取時期 | その品種の収穫期終盤 |
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その品種の収穫時期の終盤に採取します。
枝がしっかり登熟(茶色く)なっていて、いつでも収穫できる状態ならいつでもOKです。
可能なら脱粒直前あたりに収穫を待ちたいところです。早すぎると中の種が未熟なので早取りは注意しましょう。
左の画像がちゃんと熟した種です。果粒も色づいていて(その品種の色)で、種も茶色いです。
右の画像は同じ品種の未熟の果粒から取りだした種です。白く未熟な種子なのでちゃんと発芽しないかもです。
ブドウの品種改良を行う上での交配方法の手順の時期は下記のリンク先です。
ブドウの種の採取方法•手順
①発芽阻害物質を洗い流す
ブドウを収穫したら種を取り出し、よく水で洗い流します。
この時、種の周りの果肉やヌメヌメはしっかり落としましょう。そのヌメヌメは発芽阻害物質を含んでいるので、発芽率の低下に影響します。
②種とシイナを選別する
洗い流し終わったら、種とシイナを選別します。
シイナは種の出来損ない(未熟種子)なので、種と比べて明らかに小さいものをさします。(画像の右側がシイナです)
判りにくければ小さいものは全て捨てるのでもOKです。シイナを播種しても発芽しない、もしくはちゃんと成長しないので基本は処分です。
小さい種もこの後の選別で結局処分します。
③種を水に浮かせて沈むものを保管する
水を張ったボールなどに種を入れます。この時、ボールの底に沈むものを保管し、水に浮かぶ種は処分します。
水に浮かぶ種は内部がスカスカなので発芽不良になりやすく、あまり期待できないからです。
④水気を取りシリカゲルを入れて保管する
選別が終えたらキッチンペーパーなどで水気を拭き取り、茶封筒など通気性の良い紙袋に入れます。
その茶封筒を乾燥剤(シリカゲル)を底に入れたビニール袋(ジップロック イージージッパーなど)や缶(のりの缶とか)に入れて密閉します。
湿度があるとカビが生える原因になるのでシリカゲル(乾燥剤)は必ず底に入れましょう。
発芽には一定期間の低い温度に種をさらす必要があります。なので後は冷暗所、冷蔵庫の中で春過ぎまで保管します。
必要なもの
ブドウの種の休眠打破
保管温度 | 1~5℃ |
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処理期間 | 数ヶ月間 |
種子は一定期間、低温にさらさないと休眠状態を解除できず、そのまま蒔いても発芽不良(発芽しなかったりする)を起こします。発芽不良を起こさないために低温にさらしたりすることを休眠打破(きゅうみんだは)と言います。
ブドウの種を採取したら冷蔵庫で春先まで、数ヶ月間1~5℃の低温で保管する(低温処理)ことで休眠打破の条件が整います。条件が整うと発芽のためのスイッチが入るため、発芽してくれるようになるのです。
ブドウの種は嫌光性種子
ブドウの種の種類 | 嫌光性種子 |
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覆土の深さ | 第一関節くらい(深さ2~3cm) |
種には好光性種子と嫌光性種子の2種類があります。分かりやすく言うと種まきする時に覆土(土を被せる)か、しないかの違いです。
ブドウの場合は嫌光性種子なので種まきをするときは覆土をします。おおよそ指の第一関節くらいの深さ2~3cmに種を埋めるのが良いです。
ブドウの播種時期と発芽時期
ブドウの播種時期 | 4月中旬頃 |
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ブドウの発芽時期 | 5月中下旬 |
ブドウの播種時期は気温が安定し、暖かくなってきた4月中旬頃に蒔きます。上の画像は播種してから約一か月頃の様子です。
専用の育苗器で発芽を促進(発芽率を高める)させることで、1年で苗木を大きくさせることも可能です。
小型で面積を取らない発芽促進が目的なら愛菜花(あいさいか)が、幅をとってもOKなら苗がある程度大きくなっても使える ひなたぼっこ900がオススメです。
温度調整機能付きですが正確な地温は計測できないので、 育苗用温度計があると便利です。
また、タイマーは無いので24時間くりかえしタイマーを取り付けます。これを取り付けることで、寒い夜の21:00~翌6:00まで加温することができ、節電にも繋がります。
必要な道具
ブドウの種まき用の土の準備
種まきの土は播種専用土を使いましょう。例としては、メトロミックスやスーパーミックスなどの培養土です。
種まき専用に特化しているので、保水性と排水性のバランスが良く、発芽後も安心して使い続けれます。
土はめいっぱい敷き詰めた後に板などで鎮圧をします。その後、たっぷりの水をかけてあげてウォータースペースができたら種をまきます。
今回は実生選抜なので選抜が楽になるように育苗箱 35型を使いましたが、セルトレーでも問題ありません。
ただし、ブドウはすぐ大きくなるので大きめのセルトレーを選びましょう。そうすると幅をとるので、育苗箱が楽なのですが。
発芽して数か月後にポットへ移植する
育苗用土 | 育苗専用の鉢上げ培土 |
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ポット | ロングポット |
発芽して1~2ヶ月後には、その中から生育の良い苗木をポットに移植します。
この時点で生育が良い個体のみを移植するのが重要です。現時点で生育が弱い苗木は成木になったときも樹勢が弱く、収穫量が少ない傾向があるので処分しましょう。
育苗で使う培養土は育苗専用の鉢上げ培土がおすすめです。ポットは翌年もそのまま育苗できるように、ロングポットがおすすめです。
赤玉土では水没して芽枯れやすい
以前、赤玉土(小粒)で播種をしたことがありますが、育苗トレーの底に細かい土が詰まってしまい排水がうまくいかず、種や発芽した芽が水没して腐ってしまいました。
その点、メトロミックスやスーパーミックスなどは排水性がしっかりしているので、問題ありませんでした。
必要な道具
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