ブドウの品種改良を行う上での交配方法、交配時期、花粉つけ、作業方法を画像付きで解説をします。当園から作出された藤稔もピオーネと井川682を交配させて出来ました。
ブドウの開花時期を見逃すと交配できないので、品種毎の開花状況に注意しましょう。
ブドウの交配時期
ブドウの交配時期 | 6月上旬 |
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ブドウの交配時期は開花初期頃に行います。交配時期の6月上旬は神奈川県の露地栽培におけるおおよその時期です。品種によっても開花時期が変わるので注意しましょう。
また、ブドウは自家受粉(1本の木で果実が実る性質)できるため、粒が全て開花してしまうと自然交配してしまうので人工交配はできません。
開花状況をこまめに確認しましょう。
ブドウの交配に必要な道具
交配に必要な道具 | ・ピンセット ・交配用の袋(ブドウ袋) ・接ぎ木テープ(誘引テープ) |
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あると便利な道具 | ・ルーペ ・アウトドアチェア ・バット ・梵天 |
ピンセット
ピンセットは小さな葯やキャップを外すのに必須の道具です。雄しべの葯はとても小さいので先端が細くつまみやすいのがおすすめです。
交配用袋(ブドウ袋)
交配用の袋(ブドウ袋)は通常のでも良いのですが6月上旬の時期では軸がとても柔らかいので、通常のブドウ袋では袋の面期が広いので、風が吹く度に袋が煽られて軸が傷んで房がとれてしまいます。
なので風がもろに受けないような袋の面積が小さめの交配袋がおすすめです。もしくはブドウ袋を切って小さく加工します。※房が成長するにつれて、大きい袋に交換する必要がありますが。
通気性があって花粉を通さない高機能交配用袋もあります。通気性がある分、風に煽られにくいので軸が折れにくく、さらに携帯用のヒートシーラーで口を留められるそうです。
接木テープ(誘引テープ)
ブドウ袋の針金も軸が柔らかいので負荷がかかり軸にくびれが出来て取れてしまうので、上部は針金ではなく接ぎ木テープなどで巻くのが良いです。
以上が必須の道具類です。これから下はあったら便利な道具です。
ルーペ
ルーペは葯がとても小さいのであると便利です。メガネタイプや、メガネの上に取り付けられるクリップタイプのルーペもあります。
アウトドアチェア
アウトドアチェアは、交配作業で同じ姿勢を長時間とるのであった方が良いです。脚立に腰掛けても良いんですが、クッション性がある椅子のが体が楽になるのでオススメです。
バットと梵天
バットは花粉用のブドウの房を置いて、花粉を梵天につける用として重宝します。開花している房を直接雌しべにつけるのも良いですが、梵天に花粉を纏わせるのが確実です。
ブドウの交配方法の手順
交配作業は晴れ/曇りかつ、気温の高い時間帯に行います。夕方以降は気温が下がるのでうまく受精できない可能性があるので日中に交配作業は行いましょう。
①開花している粒は全て取り除く
開花している粒は自家受粉の原因になるので全て取りぞきます。自家受粉をしてしまうと同じ品種同士の掛け合わせになってしまうので、交配は失敗に終わります。
また、開花している雌しべの柱頭には何かしらの花粉がついている可能性が高いのも落とす理由になります。
②ピンセットでキャップと中の葯を取り除く
開花している粒を取り除いたら開花していない粒のキャップを上手に剥がして、中の葯を取り除きます。この時、雌しべに傷がつくと受粉できなくなる可能性があるので注意しましょう。
たまに雌しべや、雄しべが茶色く変色している場合があります。アザミウマや雑菌などの病害虫の被害にあっているため、見つけ次第、その粒は諦めて次の粒の作業に取り掛かりましょう。
③雌しべに受粉させる
花粉用に採取した房をバットなどに集めて、それを直接、処理した房の雌しべにポンポンと優しく叩きます。なすりつけるのも良いですが、今の時期の房はとても柔らかく折れやすいので注意しましょう。
また、バットに花粉を溜めて梵天で受粉させるのも良いです。梵天の方が確実に受粉させられます。
④袋をかける
花粉をつけたら交配用の袋を取り付けます。房がこれからどんどん伸びてくるので取り付け位置はやや下にしましょう。出ないと房が袋を突き破って外に出てきてしまいます(右の画像)。
袋もできたら小さめのを購入するか、切って加工して使うのが良いです。風でブラブラ揺れてしまいくびれができて落ちてしまいます。(左の画像)
後、針金は優しく巻くか、接木テープや誘引テープで口を優しく巻くのが良いです。軸が柔らかい時期なので簡単に折れてしまうので注意して行いましょう。
⑤種の採取
種の採取は、ブドウの房がしっかり収穫時期になった/過ぎた頃に採取します。粒がしっかりと熟していないと種も熟していないので発芽不良になりやすいので注意します。
種の保存方法や育苗については下記の記事で紹介しています。
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