ブドウの房作り・花穂整形について画像で解説します。
奇形の房などの時の対応や、花穂の長さがなぜ○cmなのか?などを画像と一緒に説明します。
- 花穂が伸びきった時の、開花初期に房作り(花穂整形)をおこなう。
- 品種によって房作りの長さを変えるが、種なしブドウは3.5~4cm、種ありブドウは7~8cmに調整する。
- 房が長すぎると奇形になりやすい。短すぎると粒数が足りなくなる。
- 二股などの奇形の場合、真っ直ぐかつ房型が良い方を残す。
- 主穂もしくは副穂のどちらか片方を残す。
- 第一花穂、第二花穂は房型が良い方を優先にして残す。
- 房作りの時期に15cm以下の新梢についている房は落とす。
ブドウの房作りの時期長さ・時期
花穂の長さは『先端からの長さ』です。粒の根元からではなく粒の先からの長さになります。
このときの花穂の長さがその後の収穫時の軸長や摘粒に影響するので、正確な長さに切るのが重要です。
房作り(花穂整形)の時期
花穂が伸びきった時の、開花初期に房作り(花穂整形)をおこないます。
見分けるポイントは『花穂の上段が開花し始めた頃』になります。開花初期になると房の長さはストップし、あとは開花するだけなのでそのタイミングで行います。
花穂が伸びきる前(開花前)に房切りをすると房切り後に花穂が伸びてしまい、3.5cm以上になってしまい奇形果になりやすいです。
また、本摘粒のときに丈が長いため余計な摘粒作業の手間がかかってしまいます。
ただ、開花していなくて、どうしても房作りを急ぎたい場合は、3.5cmより短く切ります。気持ち短く切ることで開花時に3.5cmくらいになります。
3.5cmにすることで本摘粒時には丈が8cm~9cmとちょうど良い長さの房になります。
この位の長さがギフト箱に入れるのにちょうど良いサイズとなり、粒同士が密着しやすく荷崩れしにくくなります。
収穫から出荷のことも考えられた長さが3.5cm(品種による)になります。
ココに注意
正直なところ開花初期頃から房作りを始めていたら間に合いませんので、開花初期前から房作りをしています。
その場合は3.5cmよりも短くします。
開花初期より前に3.5cmピッタリにしておくと、房は成長して伸びるので開花初期の頃には3.5cmを超えてしまいます。
そうすると指標より長くなるので下のようになります。
ブドウの房作りの長さ一覧
種なしブドウ
品種(種なしブドウ) | 花穂(房)の長さ(cm) | 房の先端 |
---|---|---|
藤稔・ピオーネ・巨峰 | 3.5cm | 切らない |
ブラックビート・クイーンニーナ | 3.5cm | 切らない |
ハイベリー・安芸クイーン | 3.5cm | 切らない |
ゴルビー・瀬戸ジャイアンツ | 3.5cm | 切らない |
シャインマスカット・カッタクルガン | 4cm | 切らない |
オリエンタルスター・バラード | 4cm | 切らない |
サニールージュ | 7cm | 切らない |
サマーブラック・マスカットベリーA | 6~7cm | 軽く切る |
キングデラ | 10~11cm | 軽く切る |
房尻を軽く切るのは着粒が不安定な品種です。
着粒が不安定だと、その後の房が歯抜け状態になってしまうからです。
これは品種によって異なるので注意しましょう。
種ありブドウ
品種(種ありブドウ) | 花穂(房)の長さ(cm) | 房の先端 |
---|---|---|
さがみ・竜宝 | 7~8cm | 切る |
種ありブドウの場合はジベレリン処理はしないので、房の先端を1~2cmほど切ります。
指標よりブドウの房が長い場合のデメリット
- えび反りなどの奇形果になる。
- 花振るいを起こす。
- 養分が分散し肥大に悪影響を及ぼす。
- 房が長くなるので摘粒の時に作業効率が悪くなる。
上の画像のように、左上のブドウは花穂整形(房作り)の時に指標通りの4cmにしたブドウです。
ですが左下のブドウは6cmにしたもので曲がってしまっています。
右下のブドウは房作りのときに7cmにしたもので、房が長すぎた影響でちゃんとした粒にならない『花振い(はなぶるい)』を起こしています。
このように指標通りに房作りをしないと奇形果が発生してしまうので、指標通りに花穂整形(房作り)を行いましょう。
ブドウの房作り方法の基本
種無しブドウの房作りの動画
種なしブドウの房作りの方法
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1花穂の長さを正確にする
先端から指標の長さを正確に残して切ります。
このときに残す長さが、後の摘粒や房型に影響するので正確な長さにするのが重要です。
また、房の部分から3~5cm上の部分にマーカーを作ります。
このマーカーはジベ処理をしたら折ります。ジベ処理は2回行うのでマーカーは2つ残しました。
房からマーカーの部分までは丁寧にハサミで切りました。※収穫時に軸も商品となる部分なので丁寧にハサミで切ります。
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2マーカーより上の部分は手で削ぐ
マーカーより上の部分は手で削いで作業効率を上げます。
※手で削ぐと薄皮も一緒に剥がれる時があります。剥がれるとそこは茶色くなり見かけが悪くなります。
マーカーより上部は収穫時に切り落としてしまう部分のため、茶色になっても問題ない(到熟すると茶色になるので)ので、手で削ぎます。
全て鋏で切った場合とマーカーより上は手で削いだ場合の比較画像を載せておきます。↓
手で削いだ房と鋏で切った房の比較画像
全て鋏で切った場合の房
上の画像は房作りの時に全てブドウ鋏で切った房が、大きくなった時の状態です。
切り口は小さくてとても綺麗な状態です。
手で削いだ房
上の画像は房作りの時にマーカーより上を手で削いだ房が、大きくなった時の状態です。
房作りの時に、手で削いだため薄皮が剥けてしまい切り口が大きく見えます。見た目は悪いですが、軸は収穫時に切り落としてしまうので、これでも問題ありません。
作業性を取るか、見た目を取るかの違いです。ブドウ狩りなどをしている場合は、お客さんが収穫するときに軸の見た目も重視すると思うので、全て鋏で切るのが良いと思います。
種ありブドウの房作りの方法
step
1先端を切る
種有りブドウは先端を1~2cmほどを切りつめます。
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2長さを調節する
先端を切ったところから7~8cm残して、それより上の段を切ります。
あとは摘粒の時期までそのままにしておきます。
第一花穂、第二花穂のどちらを残す?
基本的には綺麗な形の花穂を残します。
第一花穂の方が早く作られたのだから房が大きくなるとは限りませんので、形の良い花穂を選びます。
傾向としては第一花穂の方が先にできた器官のため成長が早いですが、成長とともに第二花穂も第一花穂の生育に追いつきます。
選ぶ基準は、・二股になっていない ・奇形では無い ・ちゃんと粒がついている 花穂を選びます。
1新梢1花穂が理想ですが、房作り後に強風や病害虫などで房が台無しになる可能性があるので、1新梢2花穂ほどに残すのもありです。
残す基準
- 軸が太くしっかりしている。
- 変形していない。
- 病害虫による障害が無い。
- 粒がしっかりついている。
主穂と副穂の見分け方
真っ直ぐに出ているのが主穂(しゅすい)で主穂の根本あたりから分岐しているのが副穂(ふくすい)です。
どちらか一方の花穂を残しますが、その判断基準は房型が良く、二股など奇形になっていない。
また、粒がしっかりついている方の花穂を残します。
主穂か副穂のどちらか片方を残すのが基本です。
副穂は主穂が病害虫・奇形など障害があった際に使用します。主穂に問題がなければ副穂を切り落とします。
シャインマスカットでは主穂が二股などの奇形になることが多いので、副穂をよく使います。
ブドウの房作りの応用(奇形果の対応)
先端が二股の場合
上記の場合は形がまっすぐで良い方を残し、片方を切り落とします。
花穂が途中から二股の場合
形が真っ直ぐな方を残します。
房の先端の粒が多い場合
花穂の先端が粒でぎっしりの場合は、指で落として粒を少なくします。
面倒な作業ですが、この後の摘粒作業がしやすくなります。
ブドウの房作りをしない新梢
樹勢が弱い新梢
新梢が細く短い枝は房作りをしません。
房作りの時期に新梢の長さが15cm以下の枝についている房は切り落とします。
病気や擦れで粒が無い房
病気や風によって葉や棚線に擦れてしまい、粒が無い房は切り落とします。
残しても、キレイなブドウの房にならないので他の房(副穂など)を使います。
形が悪い房(花穂)
樹勢が強いと房(花穂)の形が悪くなってしまいます。
こういった房も、残しても形が悪いブドウができるだけなので切り落とします。
ブドウの房作りにオススメの摘粒鋏
ブドウの房作りの方法|まとめ
- 花穂が伸びきった時の、開花初期に房作り(花穂整形)をおこなう。
- 品種によって房作りの長さを変えるが、種なしブドウは3.5~4cm、種ありブドウは7~8cmに調整する。
- 房が長すぎると奇形になりやすい。短すぎると粒数が足りなくなる。
- 二股などの奇形の場合、真っ直ぐかつ房型が良い方を残す。
- 主穂もしくは副穂のどちらか片方を残す。
- 第一花穂、第二花穂は房型が良い方を優先にして残す。
- 房作りの時期に15cm以下の新梢についている房は落とす。
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