ブドウの栽培

ブドウの摘心で粒を肥大させる方法と時期を解説【5月下旬~7月中旬の時期に行う】

2016年5月30日

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ブドウの開花時期の5月下旬(開花初期)から7月中旬の間に摘心をすることで、ブドウの粒を大きくすることができます。

ブドウの摘心方法と具体的な摘心の時期、そのポイントについて解説します。

 

先に結論!
  1. ブドウの摘心は5月下旬から7月中旬の期間中に行う。それ以降では葉枚数不足による生理障害や、日焼けが起きる可能性がある。
  2. 5月下旬(開花初期)~6月下旬(本摘粒の時期)に行う摘心は、果粒肥大に効果がある。
  3. 房から先7節目で摘心し、副梢は2節残して摘心する。それを繰り返し行うことで粒が肥大する。(5月下旬~6月下旬)
  4. 7月上旬~中旬に行う摘心は新梢管理の一環で陽当たりを良くして、葉っぱに光が当たるようにする。肥大促進ではなく光合成による糖度・着色の促進が狙い。
  5. 合計で15~20節ほど残す。可能なら副梢は2節残して摘心する。(7月上旬~中旬)
  6. 果粒1つに対して葉っぱ1枚の計算。
  7. 葉や枝が多く影ができている場合に限り、着色を進めるために8月頭~上旬に摘心を行う。
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ブドウの摘心とは?

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ブドウの新梢を途中で切ることを『摘心(てきしん)』と呼びます。

適切な時期に適切な方法で摘心をすることで、ブドウの粒を肥大させたり、日当たりを良くすることで糖度・着色を促進させられます。

 

ブドウの摘心の時期

摘心の時期 生育時期 目的 摘心の仕方 注意点
5月下旬~6月下旬 開花初期~本摘粒 果粒肥大の促進 ・房から先7節目で摘心し、副梢は2節(枚)残して摘心する。
・房の真上および房より前の葉っぱは何もしない。
・樹勢が弱い新梢は摘心しない
・台風前は摘心しない(落葉するため)
7月上旬~中旬 袋かけ~新梢管理 糖度・着色の促進 ・合計で15~20節ほど残す。可能なら副梢は2節(枚)残して摘心する。
・房の真上および房より前の葉っぱは伸びすぎていたら5~10節(枚)残して摘心する。
・樹勢が弱い新梢は摘心しない
・台風前は摘心しない(落葉するため)
8月頭~上旬 新梢管理 着色の促進 ・合計で15~20節ほど残す。可能なら副梢は2節(枚)残して摘心する。
・房の真上および房より前の葉っぱは伸びすぎていたら5~10節(枚)残して摘心する。
・樹勢が弱い新梢は摘心しない
・影が多い場合のみ行う
・台風前は摘心しない(落葉するため)

摘心は生育時期によって効果が異なります。そのため摘心の仕方も変える必要があります。

 

5月下旬~6月下旬の摘心の目的

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5月下旬~6月下旬に行う摘心の目的は『果粒肥大の促進』です。

開花初期~本摘粒の時期に新梢の先端を摘芯を繰り返すことで、『枝を伸ばすための養分が房に集中して肥大促進』につながります。

管理のし易さのため新梢をコンパクトにしたいのと、房に養分を集中させたいので、具体的には房から先7節目で摘心し、副梢は2節(枚)残して摘心するのを繰り返します。

 

7月上旬~中旬の摘心の目的

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7月上旬~中旬に行う摘心の目的は『糖度・着色の促進』です。

袋かけ~新梢管理の時期には摘粒は終えているので、伸びすぎた新梢や葉っぱ同士が重なり影が出来たところを綺麗に整えるのが目的です。

 

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摘心後の地面の様子『木漏れ日』

そうすることで、陽当たりが良くなり葉っぱ1枚1枚に日が当たり光合成が進むので『糖度・着色の促進』につながります。理想的なのは摘心後に『木漏れ日(太陽の日差しが漏れる)』くらいがちょうど良いです。

具体的な摘心の方法は1つの新梢に対して、合計15~20節になるようにします(可能なら副梢は1~2節残して摘心する)。摘心の基本的な考え方は『果粒1粒に対して葉っぱ1枚にすることで糖度・着色が良くなる』です。

粒数と葉枚数の計算

例)シャインマスカットの粒数40粒=必要な葉っぱ40枚

  • 20節=葉っぱ20枚
  • 副梢の葉っぱ最低1枚✕20節=葉っぱ20枚

合計の葉枚数40枚

このように、粒数が多ければ多いほど必要な葉枚数も変わってきます。

どちらも同じ摘心ですが、生育期によって効果が異なるのがポイントです。

 

ブドウの摘心のポイントと注意点

 

摘心は先端が小さい時にするのが最も効果がある

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摘心のポイント① 新梢の先端が50円玉くらいのサイズの未展葉時に行う。
摘心のポイント② 5月下旬~7月中旬の期間中に繰り返し摘心する。
摘心のポイント③ 副梢(脇芽)も摘心する。

新梢の先端が『50円玉くらいのサイズの未展葉時』に摘心するのがベストです。あまり枝が大きく生長してから摘心してしまうと悪影響が出てしまいますが、それについては強摘心による未熟粒の増加で後述します。

また重要なのが5月下旬~7月中旬の期間中に繰り返し摘心することです。常にブドウは新梢を伸ばそうとして、養分を伸ばすエネルギーに使ってしまうので、それを防ぐために摘心を繰り返すのです。

 

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先端の新梢を摘心すると副梢(脇芽)が出てきます。この脇芽も摘心する作業が必要になってきます。

理由は、副梢をそのままにしておくと養分が房に行かず副梢に行ってしまい、肥大しにくくなってしまうからです。

 

強摘心による未熟粒の増加

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    新梢の太いところ(新梢の先端より手前のところ)

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    強摘心(新梢の太いところをズバッと切ること)

また、その他の重要なポイントは

ポイント

摘芯は先端の葉っぱが50円玉くらいの小さな時に繰り返し行います。】

上記はとても重要です。

なぜ50円玉くらいの未展葉の時に摘心をするのか?

それについて論文で説明されています。

この中の論文の1つに

「新梢を強摘芯(新梢の太いところで摘心)することで、縮果症の助長】をしてしまう。」

と記載があります。

ハサミでバサッと切るのではなく、こまめに摘芯をするのが重要です。

 

開花期から果粒軟化期までの新梢管理間隔を 10 日間隔(摘心・芽かき等の弱い新梢管理。以下、「10 日区」)と

40 日間隔(強い切り戻しを伴う新梢管理(夏季せん定)。以下、「40 日区」)で比較すると、

40 日区における未熟粒の発生した果房の割合は 64%と高く、

強い新梢切り戻しを伴う管理(夏季せん定)によって未熟粒の発生は助長される

 

樹勢の弱い新梢は摘心しない

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樹勢の強い新梢のみ摘芯をするのが重要です。

弱くあまり伸びていない新梢を摘芯してしまうと、その後の新梢がまったく伸びず(副梢も伸びない)房が大きくならないのと、新梢の成長が止まるので味も落ちてしまいます。

上の画像のような『弱い新梢は摘芯しない』のがポイントです。

 

なお,樹勢の弱い新梢で,強い摘心を行うと,副梢の発生が少なく葉面積の不足につながるので十分注意する必要がある.

 

摘心をして良い時期は7月中旬まで

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摘芯をする時期は限られていて、7月下旬以降はしてはいけません。

7月下旬以降には副梢の伸びが落ち着いてくるので、その時期に摘心をしてしまうと副梢が伸びずに日が当たり過ぎてしまい、『日焼けが発生する恐れ』(青系ブドウでは日があたり過ぎて黄色くなってしまう)があります。

また、特に近年は暑いので日焼けが発生し易くなっているので要注意です。

黒系や赤系ブドウでは渋みが抜けなくなる可能性もあるので注意しましょう。

画像は7/29の枝の様子です。新梢が黄色くなってきている(木化の準備段階)ので樹勢が弱くなり、新梢の先端や副梢の伸びが悪くなります。

この状態の枝で摘心をミスして葉枚数が足りなくなると、カバーできなくなるので注意しましょう。

 

ベレーゾン期

追加の注意点で、ちょうど7月上旬からベレーゾン期に入るため、強摘心は房に悪影響を及ぼすので新梢管理は注意しましょう。

ただし、ある程度、枝を減らしておかないと影になって着色が遅くなります。

そのため、葉や枝が多く影ができている場合に限り着色を進めるために8月頭~上旬に摘心を行う。

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摘心方法は栽培環境によって変える

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    台風通過後に落ちた葉っぱ

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    台風通過後に落葉した新梢

ブドウの摘心は栽培環境で変えます。例えば台風などがくることが確定していたら、摘心をするのはやめます

台風後は確実に落葉するため、状況によっては葉枚数不足により着色がかなり遅くなるからです。※台風が塩風を運んでくる場合はさらに落葉する。

特に収穫前の8月上旬頃に台風がきて落葉した場合、直前に摘心をしていると更に葉枚数が減ってしまいます。

ブドウが糖度および着色に必要な葉枚数は=粒数なので、藤稔が35粒の場合は葉枚数は35枚必要です。その枚数を下回ると着色不良や糖度が上がらなくなり、収穫時期が遅くなります

 

強風が吹きやすい圃場の場合

環境 5月下旬~6月上旬の摘心 7月上旬~中旬 7月下旬以降 注意点
強風が吹きやすい圃場 ・合計で15~20節ほど残す。可能なら副梢は2節(枚)残して摘心する。
・房の真上および房より前の葉っぱは伸びすぎていたら5~10節(枚)残して摘心する。
・合計で15~20節ほど残す。可能なら副梢は2節(枚)残して摘心する。
・房の真上および房より前の葉っぱは伸びすぎていたら5~10節(枚)残して摘心する。
・影が多い場合を除いて、摘心を控える。 ・台風前は摘心しない。

栽培圃場が強風が吹きやすい圃場(防風網が破損など)の場合は、落葉しやすいことを前提とした摘心をします。

その場合は5月下旬~6月下旬の摘心方法を変更して、15~20節で摘心する方法(7月上旬~中旬の方法)にします。その場合は肥大効果が乏しくなりますが、収穫前までに葉枚数を確保しとかないと、葉枚数不足による着色不良(着色が遅くなる)で収穫期が遅くなります。

また、影が多い場合を除いて7月下旬以降の摘心は控えます。7月以降は台風が来やすいため、ベレーゾン期の葉枚数不足を防ぐためです。

 

ハウス栽培の場合

環境 5月下旬~6月上旬の摘心 7月上旬~中旬 7月下旬以降 注意点
ハウス栽培の場合 ・房から先7節目で摘心し、副梢は2節(枚)残して摘心する。
・房の真上および房より前の葉っぱは何もしない。
・合計で15~20節ほど残す。可能なら副梢は2節(枚)残して摘心する。
・房の真上および房より前の葉っぱは伸びすぎていたら5~10節(枚)残して摘心する。
・影が多い場合、摘心を行う。
・合計で15~20節ほど残す。可能なら副梢は2節(枚)残して摘心する。
・房の真上および房より前の葉っぱは伸びすぎていたら5~10節(枚)残して摘心する。
・台風前は摘心しない。

ハウス栽培では強風から守られるため葉枚数の確保が容易です。しかし、逆に新梢が伸びやすく影になりやすい環境です。

そのため、7月下旬以降も摘心が必要になります。ただし、収穫前に葉枚数を減らしすぎてしまうと酸味が抜けきれなかったりするので、摘心は8月上旬までにしときましょう。

 

ブドウの摘心の方法・手順

摘心にはルールがあります。

新梢が短すぎても長すぎても効果が薄いので注意しましょう。

5月下旬~6月下旬の摘心方法

step
1
房の先から数えて7節目の先で摘心する

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房の先から数えて7節目の先で摘心します。7節残すのが基本になります。

 

step
2
房の上および房より手前は摘心しない

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新梢の根元から房の上の副梢は摘心しません。ここの副梢は房の糖度を上げるための役割があるからです。

また、房を影にすることで日焼け防止にもなります。ただし、副梢が伸びすぎた場合は10節(葉を10枚)ほど残して摘心します

シャインマスカットや瀬戸ジャイアンツなどの欧州系統のブドウは副梢がかなり伸びるので、適宜摘心をします。

 

step
3
副梢は2節残して摘心する

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    摘心前

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    摘心後

摘心をすると上のように副梢が伸びてきます。副梢に養分が行かないように副梢も2節(枚)残して摘心します。

2節(枚)残すのは葉の枚数を稼ぐためです。

副梢を全て摘心してしまうと葉の数の総数が少なくなり、その新梢にあるブドウ(房)の糖度や着色に悪影響があります。

粒の肥大をさせつつ糖度を上げて着色も良くするには副梢の葉を少し残して摘心します。

 

まとめポイント

  • 房から先の7節目の先で摘心する
  • 副梢は2節残して摘心する
  • 新梢の根元から房の上の副梢は摘心しない(伸びすぎた場合は10節残して摘心する)

 

7月上旬~中旬の摘心方法

step
1
房の根本から数えて15~20節ほど残して摘心する

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新梢の根本から数えて15~20節残して摘心します。かなり長く残すため、H型短梢樹形の場合は反対側に到達します。その時は新梢が重ならないように摘心をします。

 

step
2
房の上および房より手前は摘心しない

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新梢の根元から房の上の副梢は摘心しません。ここの副梢は房の糖度を上げるための役割があるからです。

また、房を影にすることで日焼け防止にもなります。ただし、副梢が伸びすぎた場合は10節(葉を10枚)ほど残して摘心します

 

step
3
副梢の葉っぱを2枚残して摘心する

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    摘心前

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    摘心後

葉枚数を確保するために副梢は1~2枚残して摘心します。

また、以前に摘心したところから伸びてくるので再度摘心します。その時も葉枚数が1~2枚になるようにします。

 

ブドウの摘芯【まとめ】

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摘芯をする時期は開花始め(5月下旬頃)から7月中旬頃まで(品種による)

摘心の目的

  • 5月下旬〜6月下旬までの摘芯は『肥大促進』が目的。
  • 7月上旬~中旬までの摘芯は、採光確保の『着色促進』が目的。
  • 8月頭~上旬までの摘心は、採光確保の『着色促進』が目的。※影が多い場合に限る。

チェックポイント

  • 摘芯をするのは強めの枝のみで弱い新梢はしない
  • 房の先7~8節のところで摘芯。
  • 房から先の副梢は2~3枚残して摘芯。
  • 房より前の葉っぱは多めに残す。
  • 摘芯するところの葉っぱは50円玉くらいの大きさの時に繰り返し行う。
    ※ハサミでバサッと切るような強摘心はしない。
  • 7月上旬~中旬に行う摘心は15~20節残す。
  • 7月下旬以降は摘心しない。※葉や枝が多く影ができている場合に限り、着色を進めるために8月頭~上旬に摘心を行う

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