昨年実をつけたフィンガーライムの種をしっかり洗って冷蔵庫で保管し、それを5月に播種したものが一ヶ月後にようやく発芽しました。いわゆる実生栽培です。
種の採取から播種をしてから潅水などの管理ついて解説します。
- フィンガーライムの種は収穫時期の8~10月に確保する
- フィンガーライムの種まきの時期は5月頃。約一ヶ月で発芽する。
- 梅雨前の潅水は1日1回5分間 8:00に行う
- 梅雨明けの潅水は1日2回5分間 8:00と16:00に行う
- イモムシ、ダニ、エカキムシ、ナメクジの防除は徹底する。
\ 発芽促進に!/
フィンガーライムの実生・単為結果性・珠心胚について
フィンガーライムは柑橘類の1つで多胚性=種を沢山もつ性質と単為結果性を持ちます。
これによって受粉しなくても種ができるのです。
用語
- 単為結果性:受精しなくても果実が正常に実る性質
- 珠心胚:受粉(受精)しなくても種ができる能力(種は親と同じ遺伝子を持つ)
- 実生:人工授粉をせずに自然交配で、できた種のこと
単為結果性とは?
単為結果とは受精しなくても果実が正常に実る性質をいいます。
梨やリンゴでは受粉して受精して種を正常に作ることで形の良い、大きい果実になります。
つまり種が入ってないとデコボコへこんだ奇形果になったり、果実が全く大きくならず生理落果などをしてしまいます。
しかし柑橘類は単為結果性を持つので種が無くても普通の果実をつけることができるのです。
珠心胚と実生
では、なぜ受粉しなくてもミカンなどの中に種が入っているかというと、柑橘類には珠心胚という無性的な胚形成能力があるからです。
平たく言うと受粉(受精)しなくても種ができる能力で、しかもその種はほぼ親と同じ遺伝子を持つので柑橘は種を蒔いてもほぼ親と同じ苗ができるのです。
つまり、それは栄養繁殖(接ぎ木・挿し木)と同じ繁殖となります。ここでほぼ親と同じと書いたのは実はその沢山の種の中にも、偶然に他の柑橘の花粉で受精した種も入っている可能性があるからです。
ですが珍しいことに1つの種の中に受精してできた種と、そうでないものの両方があるのです。
そして、その種から育てたものを珠心胚実生と呼び、この種の中から親と別の性質が出た場合は偶発性実生と呼びます。
なので私は同じハウス内にデコポンやレモンなどの別の柑橘類を一緒に栽培して、偶発性実生のフィンガーライムの誕生を狙っています。
フィンガーライムの種の採取時期
フィンガーライムの収穫時期はおよそ8月~10月になります。収穫と同時に種を採取します。
種の採取は果実が成熟したものでないと、中の種が未成熟なので発芽率が極端に下がります。なので種の採取は必ず収穫時期になった果実を使いましょう。
もしくはAmazonや楽天でフィンガーライムの果実が販売しているので、そちらを購入して保管しておきます。可能であれば生の方が発芽率が良いです。
フィンガーライムの種の採取と保管方法
①果実を切って種を押し出す
フィンガーライムは一か所切り込みを入れて押し出せば種と果実が一緒にでてきます。
種は果実の中心に位置するので箸などでほじくっても良いです。
②種をしっかり水洗いをする
種の周りには発芽抑制物質がついているので、ヌメリがなくなるまで良く洗います。
③シイナと種を選別する
画像の左側が発芽能力を持った種で、右側の小さいのがシイナです。シイナは種の成り損ない(未熟)なので、これを蒔いても発芽しないので廃棄します。
④種は乾燥させて冷蔵庫で保管
ここでしっかり水気をとって乾燥なせないと、翌春に種まきする時にカビる可能性があるので注意しましょう。
キッチンペーパーで水気を拭き取ったり自然乾燥で水気をなくしてから、種を封筒にいれてシリカゲル(乾燥剤)と一緒にジップロックや缶の中に入れて冷蔵庫で保管します。
シリカゲルをいれるのは保管中に冷蔵庫の湿気で種がカビるのを防ぐためです。
使った資材
ポイント
- 種の採取はフィンガーライムの収穫時期の8~10月中。
- 種は水洗いでしっかりヌメリをとる。
- シイナは処分する。
- しっかり乾燥させてから冷蔵庫で保管する。
フィンガーライムの種の休眠打破
保管温度 | 1~5℃ |
---|---|
処理期間 | 数ヶ月間 |
種子は一定期間、低温にさらさないと休眠状態を解除できず、そのまま蒔いても発芽不良(発芽しなかったりする)を起こします。発芽不良を起こさないために低温にさらしたりすることを休眠打破(きゅうみんだは)と言います。
ブドウの種を採取したら冷蔵庫で春先まで、数ヶ月間1~5℃の低温で保管する(低温処理)ことで休眠打破の条件が整います。条件が整うと発芽のためのスイッチが入るため、発芽してくれるようになるのです。
フィンガーライムの種は嫌光性種子
フィンガーライムの種の種類 | 嫌光性種子 |
---|---|
覆土の深さ | 第一関節くらい(深さ1~3cm) |
種には好光性種子(こうこうせいしゅし)と嫌光性種子(けんこうせいしゅし)の2種類があります。発芽するときに光が必要かどうかの違いで、分かりやすく言うと種まきする時に覆土(土を被せる)か、しないかの違いです。
ブドウの場合は嫌光性種子なので種まきをするときは覆土をします。おおよそ指の第一関節くらいの深さ1~3cmに種を埋めるのが良いです。
フィンガーライムの種まき・播種の時期と培養土
発芽率をなるべく高くしたいので、フィンガーライムの種をまく前に培養土や蒔く時期を検討します。
培養土とポット
ホームセンターなどで販売している播種用培養土(メトロミックスやスーパーミックス)を使いました。ピートモスに他の土(パーライトとか)が混ざっているものです。
播種前には培養土に潅水して十分吸水させてから種を蒔きます。この時に板などで土を鎮圧してから水を吸水させます。そうするとウォーターエリアができるので管理が楽になります。
また、ポットは育苗箱 35型を使ってすじ蒔きをしました。
すじ蒔き
横または縦にスジをひいて種を蒔く方法です。
この方法のメリットは1つのトレーで沢山の種をまけるので、発芽率が分からない実生の種の栽培に使えます。
デメリットは発芽して苗が大きくなったときに密植のため均一に成長がしにくく、鉢替えの作業が必要になります。
ポイント
- 播種専用培養土を使用
- 播種前には培養土に潅水して十分吸水させる
- 育苗トレーにすじ蒔き
種まき・播種の時期
種まきの時期は、急な寒さがなくなり暖かくなった5月に播種をおこないました。
気温の推移を確認すると、最低気温が安定して10℃を超えているのが5月になります。
ハウス内で栽培するなら種まきの時期は3月~4月でも問題ありませんが、今回は露地で栽培するため暖かくなった5月に種まきをしました。
ちなみに上の気温の推移の画像は気象観測計のネタトモで計測しています。
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絶対に発芽させたい時
専用の育苗器で加温してやることで発芽率を高めることが可能です。
小型で面積を取らない発芽促進が目的なら愛菜花(あいさいか)が、幅をとってもOKなら苗がある程度大きくなっても使える ひなたぼっこ900がオススメです。
温度調整機能付きですが正確な地温は計測できないので、 育苗用温度計があると便利です。
また、タイマーは無いので24時間くりかえしタイマーを取り付けます。これを取り付けることで、寒い夜の21:00~翌6:00まで加温することができ、節電にも繋がります。
必要な道具
潅水の回数と時間
- 時間帯:8:00
- 潅水回数:1回/1日
- 潅水時間:5分間/1回
- 時間帯:8:00、16:00
- 潅水回数:2回/1日
- 潅水時間:5分間/1回
自動潅水機を使って上記の設定をして潅水をします。潅水し過ぎると発芽した後に腐ってしまう可能性があるので注意しましょう。
梅雨明けして7月に入ったら、1日2回(朝・夕方)8:00と16:00に変更します。7月以降は土が乾きやすいので1日2回潅水を行います。
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フィンガーライムの発芽後の管理|害虫・鉢変え
フィンガーライムは種まきから約一ヶ月後に発芽をします。発芽後はまだ苗が小さいので小まめに除草したり、蝶類の食害に合いやすいので病害虫防除を徹底します。
注意したい害虫
- ダニ
- エカキムシ(ハモグリバエ、ハモグリガ)
- イモムシ
- ナメクジ
発芽して弱々しい状態のため、丈が5cmほどになったらダニやハモグリバエ、イモムシ対策で以下の農薬を散布します。
- マシン油:ダニ類の殺虫
- ダントツ:ハモグリバエなどの殺虫
- モスピラン:イモムシの殺虫
- スラゴ:ナメクジの殺虫
ダニの被害に合うと葉っぱが黄色く変色して落葉してしまいます。フィンガーライムの葉っぱは枚数が多いですが、1枚がとても小さいので樹勢に悪影響を及ぼすので注意したい害虫です。
ハモグリバエも同様に葉っぱに被害を受けるので、定期的に防除をします。
梅雨の時期、過湿状態だとナメクジが発生して葉っぱを食べ尽くしてしまいます。同様にイモムシなどに直ぐに食べられてしまうので定期的に防除します。
モスピラン粒剤などの粒剤は、そのまま株元に散布するので便利です。
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フィンガーライムの実生・種からの育て方|まとめ・今後の栽培管理
- フィンガーライムの種は収穫時期の8~10月に確保する。
- 種は封筒に入れて、シリカゲルと一緒に冷蔵庫で保管する。
- フィンガーライムの種まきの時期は5月頃。約一ヶ月で発芽する。
- 梅雨前の潅水は1日1回5分間 8:00に行う
- 梅雨明けの潅水は1日2回5分間 8:00と16:00に行う
- イモムシ、ダニ、エカキムシ、ナメクジの防除は徹底する。
今後の栽培
育苗箱で他の苗と接触しはじめて狭くなってきたらポットに移植し、10月頃には寒さ避けのためにハウス内に移動させます。
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