ブドウの袋かけの時期・正しい方法・袋の種類・袋掛けをする理由を解説します。また、袋かけをする理由は具体的な例をあげて説明します。
間違った袋かけをしてしまうと房の上部が日射しで焼けてしまったり、病害虫による被害が出たり、ボルドー液による汚れが出るので、正しいやり方をしましょう。
また、シャインマスカットなどの青系ブドウでは専用の袋をかけることで、果皮にシミができてしまう生理障害の、かすり症を軽減することができます。
- 袋掛けの時期は本摘粒を終えた6月中下旬~7月上旬頃に行う。
- 袋掛けをする事で病害虫から守ることができる。
- 袋かけの直前に防除を行い、乾き次第袋かけを行う。
- シャインマスカットでは青色の袋をかけることで、かすり症を軽減できる。
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ブドウの袋かけとは?ブドウの袋かけをする理由
ブドウの袋掛けをする理由
- 害虫による食害などから守るため
- 雨水などによって感染する病気から守るため
- 防除による果粉(ブルーム)の溶脱を防ぐため
- ボルドー液による液だれ汚れを防ぐため
- 強い日差しからブドウの房を守るため=日焼けの防止
- 着色を促すため(特殊な袋)
害虫対策【スリップス=チャノキイロアザミウマ】
ブドウの粒が茶色くかすれたようになる害虫被害の、スリップス=チャノキイロアザミウマから守ることができます。
上の画像のように外観が大変悪くなってしまいます。袋掛けをする前にきちんと病害虫防除をして殺虫してから、袋掛けをすることでスリップスを防ぐことができます。事前にスリップスを退治しておかないと、袋のかけのタイミングで中に入ってしまったら袋の中で飼うことになるので、増殖して被害が増えてしまいます。袋の中に虫が入ってしまったら写真のようになってしまいます。
そうならないように防除後に乾いたら当日のうちに袋掛けをするのがおススメです。また、止め口はしっかり留めて、隙間からアザミウマが入らないようにしましょう。
ココがポイント
- 袋掛けをする前に殺虫剤を散布して防除する。
- 散布後に乾いたら当日のうちに袋掛けをする。
病気対策【べと病・黒とう病】
病気は罹患部の葉っぱや新梢などから雨水を伝って、房に感染します。袋をかけることで雨水がかかるのを防止できるので、病気にかからず綺麗なブドウの房がつくれます。ただし、ブドウの留め口に隙間があいていると、そこから雨水を介して病気が侵入します。
黒とう病などの病気がすでに発生していたら、農薬を散布後に乾き次第、当日中に袋かけを行います。すでに畑のどこかで胞子が生成されているので、被害果をこれ以上増やさないようにするためです。
ブドウの【べと病】
画像はブドウのべと病です。最初は粒が茶色くなりますが感染拡大すると、しぼしぼの梅干しのようになっていまいます。
ブドウの【黒とう病】
ブドウの黒とう病です。房に感染すると黒い点々の症状がでて、外観を損ねる病気です。
ココがポイント
- 袋かけをする前にスリップスや黒とう病の防除をする
- 黒とう病などがすでに発病していたら農薬を散布後に乾き次第、当日中に袋かけをする。
ボルドー液による汚れ防止
袋掛けをしないと上のブドウのように、ボルドー液によって白い汚れがついてしまいます。ブドウで使うボルドー液とはICボルドー66Dのことです。
ICとは井上石灰の略で、石灰=カルシウムが含まれているので画像のように白くなってしまいます。このように表面を銅イオンや石灰が覆うことで、病原菌の侵入を防ぎます。
ちなみにICボルドーはカルシウムと銅イオンの単純な混合液なので、有機農産物に使用できる農薬で回数制限や収穫前日数などの制限がない、環境にやさしい農薬になります。ただブドウにつくと外観が損なわれるので、必ず袋掛けをしてから散布をします。
ココがポイント
- ボルドー液の散布前には必ず袋掛けをすること
ブドウの袋かけの時期・袋かけの前にすること・タイミング
- 袋掛けの時期:本摘粒を終える6月中下旬~7月上旬頃。
- 袋かけの前にすること:事前に治療剤・殺虫剤を散布することで、袋の中で菌や害虫の繁殖を防ぐことができます。
- 袋かけのタイミング:ブドウの房に水滴が無い、乾いた状態で袋をかけます。
袋かけのタイミングで注意すること
ブドウの房に水滴が無い、乾いた状態で袋をかけます。水滴がついた状態で袋をかけてしまうと、中で蒸れてしまい灰カビ病などが発生する可能性があります。なので農薬散布をした後や、雨が降ったあとに水滴がついている場合は、乾いてから袋かけをしましょう。
雨が長く続いて、袋かけがなかなかできない場合は『ぶどう用の傘』をかけるのも手です。病気は雨を伝って伝染しますが、傘は雨を弾くので病気が伝染しにくいです。
ブドウの袋かけのポイント・掛け方の動画・袋の向きについて
- 袋の上部(入り口)を針金でしっかりと畳む。
- ブドウの房を袋の中央にする。
- 袋の窓やスリットを北側に向ける。
ブドウの袋かけのポイント
留め口はしっかりと軸を巻き込み折りたたむように留めます。口が少しでも空いているとそこから水滴が入り込み病気の原因になりますし、スリップス(チャノキイロアザミウマ)が入り見た目が悪くなってしまいます。同様に隙間が空いていると、雨水が中に入り病気にかかったり、ボルドー液による液だれで、ブドウが白く濁ってしまいます。
袋の口を房の上部に近くにすると日射しと熱により、粒が萎れたり日焼けを起こす可能性があります。特に近年は気温と日射しの強さが強い(高い)傾向なので、その確率は上がっています。なので必ず房が袋の中央にくるようにします。
ココがポイント
- 病害虫対策として、留め口は雨水や虫が入らないようにしっかりとめる。
- 日焼け防止のために、ブドウの房が袋の中心になるようにする。
ブドウの袋かけの動画
袋の向き
窓付きやスリット入りの袋の向きに注意しましょう。スリットや窓がある部分は北側に向けて袋をかけます。
理由は【太陽は東から昇り西へ沈む】ので、窓やスリットを東西の方に向けてしまうと、そこから強い日射しが入り日焼けの原因になるからです。なので窓やスリットの部分は北側に向けて袋をかけます。
一律の向きに付けたほうが着色が確認しやすく、作業性の向上にも繋がりますので統一しましょう。また、留め口は緩まないようにしっかり留めましょう。
ブドウの品種別の袋のサイズ
系統 | 品種例 | 袋のサイズ |
---|---|---|
大粒系統 | 藤稔、ピオーネ シャインマスカット クイーンニーナ など |
19〜21サイズ (大~特大) |
中粒系統 | 巨峰、竜宝 安芸クイーン、バラード など |
17〜18サイズ (中~大) |
小粒系統 | デラウェア など | 16サイズ以下 (小〜中) |
袋が小さいとブドウの粒が大きくなった際に、袋にあたって擦れてしまうので注意。サイズはあくまで例です。
摘粒で丈を長く作ったり粒を増やして大きくした場合は、袋のサイズをワンサイズ上に変更します。
ブドウ袋の種類
ブドウの袋には着色を促進することを目的としたモノや、窓付きで着色具合が確認でき収穫の判断をし易くするモノがあります。
BIKOO 二重袋(傘付)
透明のフィルムでブドウの着色を促進する袋になります。ただし、極小の細孔が空いているのでボルドー液などを散布すると果実が白く汚れる恐れがあります。
また傘無しタイプは日射しが強すぎる年では、日焼けや熱による萎れが起きることもあります。
窓付き ブドウ袋
窓付きのブドウ袋なので収穫時に着色の様子を確認し易いです。
黒系ブドウは日中や朝方など光の加減でどうしても見にくいので、窓付きはかなり助かります。
青系ブドウの専用袋
青系ブドウ専用の袋です。色むらを無くし熟期を統一させるのに使うそうです。
上2/3が青色の理由は、日差しの強いブドウ園で全面青だと葡萄の下側だけ熟期が遅れるため下側1/3が白色になっている。
かすり症対策の袋
シャインマスカットでは熟度が進むと果皮が茶色くなる「かすり症」が発生しやすいです。
かすり症の発生は青色の専用袋を使うことで、発生を減少させられる研究結果がでています。
カサジゾウ タイベック傘セット
ブドウの袋かけの前に設置するタイベック傘です。タイベックシートを使用しているので、日焼けがしにくくなり、洗って何度でも使用できます。
2回目のジベ処理後の早い時期に設置することで、雨などで伝染する黒とう病にかかりにくくなります。病気は雨水を伝って感染するので、この傘があれば伝染するリスクをかなり減らせます。
蝋引き傘 240角
こちらもブドウ用の傘になります。ただ、タイベックシートのように繰り返し使えるものでは無いので、一回つかったら廃棄する消耗品タイプです。
ブドウの袋かけ|まとめ・参考資料
- 品種やブドウの丈によって袋の種類を変えます。そのためには房作りや本摘粒の時にどんな房型にするかを計画しときます。
- 袋掛けの時期は本摘粒を終えた6月中下旬~7月上旬頃に行う。
- 袋掛けをする事で病害虫から守ることができる。
- 袋かけの直前に防除を行い、乾き次第袋かけを行う。
- シャインマスカットでは青色の袋をかけることで、かすり症を軽減できる。
参考資料
資料
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