ブドウの栽培

ブドウのジベレリン処理1回目の時期と濃度

2023年8月1日

ブドウのジベレリン処理1回目の時期と濃度 79
ブドウのジベレリン処理1回目の時期と濃度 93

ブドウのジベレリン処理(通称ジベ処理)は通年で1回だけ行う1回処理と2回処理をする2つの方法があります。

1回処理は天候リスクにより失敗の可能性が高くなるので、一般的にジベレリン処理は満開時期と満開から〇〇日後の合計2回おこなう処理が基本です。

この記事では2回処理の1回目のジベレリン処理の時期と濃度を解説します。

ブドウのジベレリン処理1回目の時期

1回目のジベレリン処理の時期 満開時~満開3日後
ジベレリンの濃度 25ppm
品種 藤稔、シャインマスカット 等

上記の表はシャインマスカットや藤稔などのブドウのジベ処理の時期(1回目)の早見表です。

他の品種や詳細については下記の一覧表を確認してください。

 

ブドウ別のジベレリン処理1回目の時期と濃度の一覧表

2回浸漬処理(種無し栽培)一覧表です。下記の表には1回目のジベレリン処理時期と処理濃度および目的も品種別に記載しています。

系統 品種名 目的 1回目の処理時期 処理濃度
小粒品種 デラウェア 種無し化 満開予定日の約14日前
※第1新梢の展葉枚数が平均10.5枚になった日
ジベレリン100ppm
(100mg/L)
ジベレリン処理適期幅拡大 満開予定日の18~14日前 フルメット1~5ppm
(1~5mg/L)
2倍体米国系品種 マスカットベリーA
ナイアガラ
アーリースチューベン
キャンベル
キャンベルアーリー
スチューベン 等
※ヒムロットシードレス除く
種無し化 満開予定日の約14日前 ジベレリン100ppm
(100mg/L)
着粒安定 満開予定日の約14日前 フルメット2~5ppm
(2~5mg/L)
2倍体欧州系品種 瀬戸ジャイアンツ
ロザキ
マリオ
ロザリオビアンコ
マスカットオブアレキサンドリア
シャインマスカット
ルビーオクヤマ
クイーンルージュ
ルビーオクヤマ
甲斐路
カッタクルガン
シャルドネ
ネオマスカット
紅環
ベニピッテロ
マニキュアフィンガー
リザマート
クイーンセブン
甲州 等
種無し化 満開時~満開3日後 ジベレリン25ppm
(25mg/L)
着粒安定 満開時~満開3日後 フルメット2~5ppm
(2~5mg/L)
果粒肥大の促進 満開から3~5日後
(落花期)
フルメット10ppm
(10mg/L)
3倍体品種 BKシードレス
ナガノパープル
サマーブラック
甲斐美嶺
安芸シードレス 等
※キングデラ除く
※ハニーシードレス除く
着粒安定 満開時~満開3日後 ジベレリン25~50ppm
(25~50mg/L)
着粒安定 満開時~満開3日後 フルメット2~5ppm
(2~5mg/L)
3倍体品種 キングデラ 着粒安定 満開時~満開3日後 ジベレリン50ppm
(50mg/L)
着粒安定 満開時~満開3日後 フルメット2~5ppm
(2~5mg/L)
3倍体品種 ハニーシードレス 着粒安定 満開から3~6日後 ジベレリン100ppm
(100mg/L)
4倍体巨峰系品種 巨峰
藤稔
ピオーネ
安芸クイーン
翠峰
ゴルビー
シナノスマイル
さがみ
竜宝
ハイベリー
紅義
高妻
サニールージュ
ルビーロマン
クイーンニーナ
ハニービーナス 等
※あづましずく除く
種無し化 満開時~満開3日後 ジベレリン12.5~25ppm
(12.5~25mg/L)
着粒安定 満開時~満開3日後 フルメット2~5ppm
(2~5mg/L)
果粒肥大の促進 満開から3~5日後
(落花期)
フルメット10ppm
(10mg/L)
4倍体巨峰系品種 あづましずく 果粒肥大の促進 満開時 ジベレリン25~50ppm
(25~50mg/L)

系統によって12.5~25mgと幅がありますが、品種によってはジベレリンの感受性が低いものがありますので、最大値の濃度で処理をするのがよいです。

また、フルメットは着粒安定を目的とした場合、ジベ処理の時期と重なるのでジベレリン溶液に添加します。

 

ブドウの満開の時期と画像

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ブドウの開花時期 5月下旬~

上の画像が満開時の様子です。キャップが上から下まで全て外れて雌しべが全て出た状態を満開時と呼びます。満開時前にジベ処理をしてしまうと海老反りなどの奇形果が発生します。

ブドウには花弁が無く、キャップと言われる帽子がついていてそれが外れる事を開花と呼びます。

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    キャップが外れた花穂
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    外れたキャップ

 

満開予定日前の計算の仕方

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ブドウの種類によっては満開予定日の18~14前にジベ処理を行うべしと書いてあります。その場合の開花予測は主に新梢の展葉枚数で測します。

新梢の展葉(新梢についている葉がしっかり広がった状態)枚数が平均10枚頃がデラウェアのジベ処理時期です。

 

ブドウのジベレリン溶液の作り方

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用意するもの 処理濃度 入れる量
2ℓのペットボトル - 2L(水)
ジベレリン粉末 25ppm 50mg(1包)
フルメット液剤 5ppm(200倍) 10ml(1本)
ストマイ(アグレプト)液剤 200ppm(1000倍) 2ml

 

ジベレリン液剤の作り方|希釈表

 

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ジベレリン50mg含有の小スティック1包当たりの希釈表 単位 ppm(mg/L)

ジベレリン濃度 1ppm 5ppm 10ppm 12.5ppm 25ppm 50ppm 100ppm
水量 50L 10L 5L 4L 2L 1L 0.5L
希釈倍率 100,000倍 20,000倍 10,000倍 4,000倍 2,000倍 1,000倍

小スティックには50mgのジベレリンが入っています。5ppmにしたいなら10Lに1包いれます。25ppmにしたいなら2Lに1包といった具合です。

ジベレリンには錠剤や量の多い大スティックタイプもあります。その場合のジベレリン含有量が異なりますので、「ジベレリン含有量÷処理したいジベレリン濃度=水量(L)」の計算式ではじき出せます。

ペットボトルに半分くらいの水を入れて、そこにジベレリン(フルメットやアグレプトを添加する時は一緒に入れる)を入れた後に2Lに調整します。2Lに調整したら蓋を閉めてしっかり攪拌しましょう。

 

フルメット液剤の作り方|希釈表

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フルメット液剤(cppu0.10%含有)10ml当たりの希釈表 単位 ppm(mg/L)

cppu濃度 1ppm 2ppm 3ppm 5ppm 10ppm
水量 10L 5L 3.3L 2L 1L
希釈倍率 1000倍 500倍 333倍 200倍 100倍

フルメットは開封したら使い切るようにしましょう。2Lのペットボトルで調剤する場合、5ppmにしたいならフルメット液剤を1本入れます。10ppmにしたいなら2本入れます。

計算がやや面倒なので2Lのペットボトルに1本(10ml)入れると5ppmになることを基準に計算すれば分かりやすいと思います。

着粒目的なら作成したジベレリン溶液にフルメットを添加すればいいので、ジベレリンと一緒に入れましょう。

 

ストマイ液剤(アグレプト)の作り方|希釈表

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ストマイ液剤(アグレプト)の希釈表 単位 ppm(mg/L)

ストマイ濃度 200ppm
水量 2L
希釈倍率 1000倍

ストマイ液剤は無種子化するのに使用します。希釈倍率は1000倍なので2Lに対して2mlを入れます。

使用方法は満開予定日の14日前~満開期ですが、ジベレリン溶剤に添加する形で使用します。

 

作った溶液の保存方法と使用期限

作った溶液は可能ならその日に使い切るのが良いですが、花穂ごとに開花時期がずれているので冷蔵庫で保存するのも可能です。

もちろん一回使った溶液は残ってしまったら土に吸わせて廃棄します。使っていない溶液は誤飲しないようにちゃんと目印をつけて冷蔵庫で1週間程度なら持ちます。

ただしジベレリンなどの説明書には使い切るように書いてあるので、あくまでも自己責任の範疇なので気をつけましょう。

 

ブドウのジベレリン処理の仕方

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手に溶液がつかないようにゴム手袋などをしてジベ処理をします。ブドウの花穂が一番上までしっかり浸かるようにカップの中に入れて数秒待ちます。

一番上まで浸かるようにするのがポイントで、浸かっていない所があるとそこだけ種有りになってしまいます。浸け残しが無いようにしましょう。

カップを引き抜いたら花穂についている雫を指でトントンと揺らして落とします。雫が残っているとレンズ効果で日焼けしてしまうので注意しましょう。

 

ジベレリン容器(カップ)について

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ブドウのジベレリン処理に使うカップはジベレリンを買うときに付いてくる専用の容器(サイズは小)を使います。

浸漬処理用のカップのサイズは小~特大とあり、小は満開時の花穂に使用するサイズで、大~特大は2回目のジベ処理の時に使用します。藤稔などの大房では2回目の時に使うカップは特大サイズがオススメです。

この専用カップはお店でジベレリンと一緒に販売していたり、通販だと購入時にオプション扱いになっているので一言連絡が必要だったりするので注意しましょう。

無い場合は市販の200ml以上のプラスチックカップ(ビール飲むときとかに使う奴)でも代用できます。

また、らくらくカップ2というジベ処理専用の道具がありますが、ジベ処理の2回目に使用するのがお勧めです。

1回目にカップサイズ小のらくらくカップ2でジベ処理しましたが、1回目に関しては普通のカップの方が確実&やりやすかったです。

 

ブドウのジベ処理時の天気および時間帯

天気 晴れ/曇り
ジベ処理の時間帯 8時以降※房が朝露などで濡れていない(乾いている)時間帯

天気は晴れか曇りが良いです。ジベ処理はどうしても梅雨の時期にぶち当たるのでなんとか晴れた日に行います。

またジベ処理後に雨が降ってしまうとやり直しになる場合があるので(降雨量による)、丸一日雨が降らない日を選びます。

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ジベ処理後に日焼けした房

ただし日射しが強すぎると上の画像のようにジベ処理後に日焼けをしてしまうので、曇りの日が良いです。

 

1回目のジベレリン処理後に雨が降った場合の対処法

ジベ処理の再処理の基準 ジベ処理後8時間経過する前に連続5mmの雨が降った場合

処理したジベレリン溶液を十分に果粒内へ浸透させるために80%程度と高めにする。

ジベレリン溶液の果粒内への浸透は、処理後8〜10時間が大切であるので、処理直前から湿度には注意する。

処理したジベレリンが内部に浸透するには湿度が80%以上で8時間経過する必要があります。

ジベ処理時期は梅雨の時期なので湿度はほぼ問題ないため、経過時間がポイントになってきます。

ジベ処理作業が16時に終わったら8時間後の24時までに降らなければOK。(降ったとしても小雨程度なら問題なし)

 

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