
フィンガーライムの育て方について熊本の方から相談がありましたが、当園もフィンガーライムの育て方について研究中です。
この記事では現在分かっているフィンガーライムの育て方(気温や湿度などの栽培環境)の情報についてまとめました。
- 熊本の方の情報
- フィンガーライムの苗木を販売している苗木屋さんの情報
- 当園での栽培の情報
- 原産国オーストラリアの気候と日本の気候を比較して分かったこと
上の情報をまとめたのでフィンガーライムの栽培に役立ててください。
- フィンガーライムは寒さに弱いが、気温が-2℃でも生き延びた。
- フィンガーライムはオーストラリア原産。
- 日本の気候では疫病や黒点病になりやすい。
- 根腐れが起きやすいので過湿に注意する。



\ 大苗は枯れるリスクを減らせます!/
フィンガーライムの基本情報


- 【分類】ミカン科ミカン属の常緑樹
- 【学名】Microcitrus australasica
- 【原産国】オーストラリアの沿岸地域
- 【開花期】・4月~6月 ・7月~10月
- 【収穫期】・8月~10月 ・12月頃
- 【樹高】1.5~2m
- 【耐寒性】0~5度(品種により違いがあります。)
- 【果実をつける性質】・四季成り(環境による)・単為結果性(受粉しなくても果実をつける)
- 【適正土壌pH】弱酸性(pH6.5くらい)
原産地のオーストラリアの栽培環境
- 気温は10℃を切ることが少ない。
- 空気が乾燥している。
- 寒暖差が10℃近くもある。
- 降雨量は日本と比べると少ない
フィンガーライムで分かっているのはオーストラリア原産の果物なので、原産国であるオーストラリアの気候についても知る必要があります。
フィンガーライムはオーストラリアの地中海沿岸が産地のようなので、地中海気候のシドニーの気温などを調べてみました。
現地の気候はどうなっているかを知ることで、日本での栽培に役立てることができます。
シドニーの気候
シドニーでは日本と同じように季節の移ろいを感じることができますが、年間を通して非常に穏やかな気候です。
冬でも10℃を切る日はそれほど多くはなく、また真夏でも空気が乾燥しているため、からっとしていて、過ごしやすいことが特徴です。
1日の中で最高気温と最低気温の差が10℃近くあることも多く、年間を通して服装の調節ができるよう季節に合わせた上着等は必要でしょう。
降水量も日本に比べると少なく、何日も雨が続くこともあまりありません。3月~6月は1年の中でも雨の多い時期になります。
地中海性気候:シドニー、パースなど
四季はありますが年間を通して晴天の日が多く、過ごしやすい気候です。
関東では10℃を切ることが多々あるので、露地栽培は厳しいかもしれません。また、シドニーと違い日本は高湿多雨なので疫病・根腐れ・黒点病対策は必須のようです。
後述しますが、当園で育てているフィンガーライムが開花したのはハウス内での寒暖差が影響したのかもしれません。
最高30℃−最低5℃=寒暖差25℃※普通は寒暖差を少なくするようにハウスを開け閉めします。
5月、6月に開花して収穫が8月〜10月なので、やはり気温(寒さ)がポイントかもしれません。
ちょっとした小話
熊本の方とは別で当園に栽培についてご相談に来られた方にお聞きしたことです。
実は原産地でも0℃を下回ることがあり、落葉しても翌年はちゃんと新梢や葉っぱが出るそうです。
ですので寒さで落葉してもその後の管理に気をつければ問題なさそうです。
フィンガーライムの各地での栽培・育て方の情報


熊本
- 加温ハウスで最低10℃をキープ
- ライムが蕾をつけない(開花しない)
- 剪定はほぼしていない
福岡【吉岡国光園(苗木屋)】
- 湿度に弱く、疫病にかかりやすい
- 半耐寒性だが寒さに弱い
- ハウス内で栽培
- 耐寒性はフィンガーライムのピンクの方が上
- 収穫時期【8月〜10月】
滋賀【千草園芸 楽天市場店】
★育て方★
耐寒温度は5℃と、他の柑橘より少し寒さに弱いです。
日本でもとても温暖な地域は庭植えが可能ですが、寒くなる地方では冬場の防寒対策が必要です。
鉢植えの場合は屋内に入れましょう。用土は、みかんと同じで少し酸性土壌を好みます。
水はけが悪いと根腐れを起こしやすいので、注意が必要です。
フィンガーライムは冬場に休眠します。
冬場は成長が止まり、葉も落ちる場合がありますが、問題ありません。
植え付け後、花が咲くまでは肥料は控えめにしてください。
主な害虫はアブラムシや蝶の幼虫です。新芽の時期は注意が必要です。
主な病気は黒点病で、菌が原因なので、黒点が出た葉は除去し、
落ち葉などもきれいに除去してください。
神奈川【青木果樹園】
- 無加温のハウス内で栽培
- 12月〜1月に最低気温-2℃にタッチしたが生き延びた
- 2月〜3月最低気温2℃以上をキープ
- 最高気温30℃(ハウス内締め切りのため)
- 湿度40〜80%(ハウス内締め切りのため)
- 3月現在、蕾をつけている。
- 例年、開花するが生理落下してしまう。→肥料の問題?4年目位から果実をつけた。
- 剪定は枯れてる枝を切る程度
- 重なる枝のみを剪定する、間引き剪定で新梢を出す。
- 実らせる枝は剪定しない。
- ライムは四季成り性
- 柑橘類と同様に春枝、夏枝、秋枝が出る。
- 疫病の発生による枯れは現在まで無し(強剪定による枯れは有り)
- 蝶の幼虫の食害がかなりの頻度で発生
- 施肥は冬季に有機配合を50〜100g、30lのポットで栽培
フィンガーライムの育て方の環境(気温・湿度)を解説


寒さに弱く疫病になりやすいのでこの3つに注意して栽培しましょう。
【気温】無加温ハウス内の気温の推移
フィンガーライムは無加温のハウス内で栽培しています。
冬季は最低気温は-2℃ほどを数回記録しましたが、おおよそ0〜5℃の範囲におさまっています。
寒さで葉っぱが落ちてしまいましたが、春先から新梢が出てくれたので問題ありませんでした。
寒い時期に剪定すると枯れ込みやすいので、剪定は暖かくなる4月ころがおススメです。
春以降の3月ではハウス内の気温は5℃〜25℃の範囲で、夏は20℃〜40℃の範囲です。
【湿度】無加温ハウス内の湿度の推移
冬季〜春にかけては寒さ対策で締め切っているので、湿度が50〜90%と高い状態です。
寒さがやわらぐ5月以降には側窓を開放して、湿度を下げています。
湿度が高いと疫病や黒点病が発生しますので、防除は徹底します。
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設定方法について下記のリンクで紹介しています。
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ですが日本語のアプリから設定するので特に問題ありません。

【水やり】時期ごとの灌水回数と間隔
- 4月〜6月は1日に1回
- 7月〜10月は1日に3回
- 11月〜3月は2~3日に1回
梅雨の時期は潅水をしすぎないように注意しましょう。
水をやりすぎると根腐れや過湿による疫病が発生や、ナメクジが大発生して葉っぱが食べ尽くされます。(経験済み)
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フィンガーライムの剪定方法と時期について解説
フィンガーライムの剪定時期を間違えると枯れてしまう恐れがあります。
さらに剪定次第では実が全然つかない場合があるので注意しましょう。
剪定時期は3月
剪定時期は開花直前の3月頃がオススメです。
寒い時期に剪定をすると、枝が枯れこむリスクがあります。
実際に早めの2月頃に剪定をしたら見事に枝が枯れました。
なので暖かくなってきて蕾をつける直前の3月にオススメします。
剪定方法は間引き剪定をメインに
間引き剪定とは、主幹から出ている不要な側枝を根元から剪定する方法です。
フィンガーライムは枝が小さな森のように沢山出るため、影になりやすく風通しが悪くなるので病害虫が発生しやすくなります。
なのでボサボサの不要な枝をすくように数を減らすことで、そのリスクを減らせられます。
間引く=根元から剪定=強剪定なので、夏に強めの新梢がでやすくなるので枝の更新がしやすくなります。
また、果実をつけたい枝に関しては先端を少し切り戻す、切り戻し剪定をします。
フィンガーライムは春枝・夏枝・秋枝と3回新梢が伸びて来年果実をつける結果枝になります。
つまり強く切り戻すと新梢は出ますが、結果枝が無くなって果実をつけなくなるので注意しましょう。
2019年の春に強めに切り戻してしまったので果実が2個しか実らなかったです。。
ココがポイント
- 間引き剪定+切り戻し剪定の組み合わせで剪定を行う
- 剪定時期は開花直前の3月頃がオススメ
- 昨年伸びた枝に果実をつける前提で、果実をつけたい枝は弱剪定をする。
- 逆に強い新梢を出したい場合は強く切り戻して、秋果をつけるようにします。
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下のが私が使っている刺対策用の専用グローブです。

フィンガーライムの新梢・開花・収穫時期について
フィンガーライムは柑橘系の果樹のライムの仲間なので、四季成りの性質を持っています。
また、新梢の伸びる時期が複数回あるのでそれについて解説します。
新梢が伸びる時期
新梢が伸びる時期は3回あります。
それぞれ伸びる時期が違っていて、実をつけるための枝になりますが性質が異なります。
- 【春枝】5月~6月頃に新梢が伸びる:花芽がつきやすい
- 【夏枝】6月下旬~7月下旬頃に再度新梢が伸びる:花芽がつきやすい
- 【秋枝】8月上旬~9月頃に再度新梢が伸びる:花芽が少ない
このように【どの時期に伸びた枝】によって花芽のつき(来年果実をつける枝)が異なるので、それによって剪定方法を変える必要があります。
下の画像は各時期に伸びた新梢の様子です。
開花・収穫時期
フィンガーライムは四季成り性を持つので、3月~5月頃に開花して、さらに7月~10月にも開花することがあります。
※当園はハウス栽培なので開花時期が早くなり、2月の上旬には開花が始まります。
- 3月~5月頃に開花➡収穫は8月~10月
- 7月~10月にも開花➡収穫は12月頃
また、フィンガーライムは単為結果性のため受粉しなくても実をつけます。
下記の画像は各々の開花時期の様子です。
昨年伸びた結果枝を切り戻しをせずにいたので花芽をつけています。
おそらく最後に伸びた【秋枝】だと思います。

8月10日
こちらは二回目の開花時期の様子です。まだ蕾の状態ですがじきに開花します。
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フィンガーライムの果実とレシピ


果実
フィンガーライムピンク
フィンガーライムグリーン
レシピ
ライムのプチプチ食感と爽やかな果汁で、豚タンの臭みが抑えられて美味しく食べれます。
フィンガーライムの種類の一覧
フィンガーライムの種類には緑色、ピンク、紫色、黒など品種によって色んな色の実をつけます。
緑色が一般的ですが、ピンクや赤色などの果実はカクテルや料理に華を添えます。
緑色
グリーン・アルストンビル
ピンク
リックスレッド
シャルトルーズレッド
ブラウン
エマ
コレット
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フィンガーライムの栽培に使う道具


剪定鋏
細い枝や狭いところを切るのにオススメの剪定鋏です。フィンガーライムの枝は細く密集しやすいので先端が尖っていて小型の剪定鋏が適しています。
トゲが刺さらない手袋
フィンガーライムはトゲがたくさんあるので、普通の手袋では貫通してマジで痛いです。この手袋は枝を握ってもトゲが貫通しないので重宝しています。手入れ全般に使えます。
加温施設&道具
フィンガーライムは0℃下回ると葉っぱが落葉してしまい枯れるリスクが上がるので、寒さ対策が必須です。当園(神奈川県)では無加温のハウス栽培で冬場は-2℃をタッチしましたがなんとか生き残っています。
フィンガーライムの栽培·育て方を解説|まとめ
以上がフィンガーライムについての情報です。冬の寒さが心配なら冬期は室内や玄関に移動すれば枯れるおそれがなくなります。

- 灌水のしすぎで根腐れや、過湿による病気の発生に注意する。
- 寒さは0℃を少し下回っても生きているが、最低気温は5℃前後をキープするのが安心。
- 間引き剪定+切り戻し剪定の組み合わせで剪定を行う。
- フィンガーライムは単為結果性なので受粉は不要

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