ブドウのかすり症は粒に茶色いシミができて、見た目がとても悪くなる症状です。
収穫時期になると出てくる症状で、青系ブドウの瀬戸ジャイアンツやシャインマスカットに出ると、外観を損ねてしまうのが問題になっています。
この記事ではブドウのかすり症の原因と対策について具体的に紹介します。
- かすり症の原因は養分不足による結果です。
- かすり症を防ぐための対策は着果量を減らしつつ、1房あたりの粒数を制限して、光反射シートを設置して光合成を促進する。
- 青色の専用袋を使うことで「かすり症」の発生を減少できる。
- カルシウムを施用(カルシウムの葉面散布)
- 一房当たりの粒数を減らすことで負担を減らす(35粒以下にして負担を減らす。)
- 樹全体の着果過多を防ぐ(カウンターで房数を確認して房数を抑制する)
- 環状剥皮により木の樹勢を弱める。
- 6月~7月下旬にかけて摘心をして日当たりを良くする。
- 光反射シートで光合成を促進させる。
\ 発生を軽減できる青系袋/
\ 光合成を促進させる反射シート/
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ブドウのかすり症とは?
瀬戸ジャイアンツやカッタクルガン、シャインマスカットの果皮にカスれたような痕(シミ)が出てしまいました。
味への影響はあまり無いのですが見た目が悪くて、、。
何が原因かなぁと調べてみましたらシャインマスカットにも出ている症状で対策の資料も出てきました。
ブドウのかすり症の原因と対策
かすり症の原因
上記の参考資料を確認したところ複数の原因があるようです。
原因
- カルシウム不足が原因
- 着果過多や一房が大きいとそれが負担になり、かすり症が出やすくなる
- 樹勢が強いとかすり症が出やすくなる
- 日照不足(日当たりが悪い)だと発生しやすい
- 新梢の弱勢化や果粒肥大不足が発生に関与している可能性
- 青色袋を使用しても、日当たりのよい果房は果皮が黄化しやすく、かすり症も発生しやすいので注意する
ブドウ「ロザリオビアンコ」における‘かすり症’の発生要因および発生抑制技術
1.「ロザリオビアンコ」は、棚下が低日照や高湿度になるとかすり症の発生が多くなる。
また、低日照と高湿度が重なるとさらに多くなる(表1)。
2.低日照や高湿度条件下では、果皮が薄くなるとともに強度の低下がみられ、かすり症が発生する要因と考えられる(表1)。
3.かすり症は果皮が薄く強度が低い果粒に多く、果皮表層に微裂果の発生がみられる(図1、2)。
4.棚下の葉影率 90%以上の低照度・高湿度の環境から、新梢管理により棚下の葉影率を70~80%の明るい環境に改善することにより、
果皮の厚さや強度が高まり、かすり症の発生が軽減する。
また、着粒数が多い密着果房は発生が多いため、適正な着粒数にすることが重要となる(表2)。
ブドウ‘シャインマスカット'の成熟果実に発生した果皮表面の褐変症状
ガラス室で無加温栽培したブドウ‘シャインマスカット'に発生した果皮褐変症状‘果面障害'について特徴および発生状況を調査した
1. 褐変部位の果皮表面に物理的な損傷はなく、表皮細胞組織に褐変部位が観察された果面障害は
果粒軟化47日後から軽微な発生が確認され、同66日後までの調査期間を通して、
発生果房率が上昇し、発生程度も増大した。圃場内での果房の着生位置と発生状況との関連は認められず、樹による個体差が大きかった。
2. 果面障害の発生程度が異なる樹の様相の違いについては判然としなかったが、発生果房を着生した新梢は細く、新梢葉面積が小さかった。
また、発生果房の果粒重は果実の生長期間を通して小さく、果皮の黄緑色値は小さかった
3. 以上のことから、ブドウ‘シャインマスカット'に発生した果面障害は、
収穫始めから発生する生理的な現象の可能性が高く、新梢の弱勢化や果粒肥大不足が発生に関与している可能性が示唆された
ブドウ「シャインマスカット」の果実袋は青色袋が適している
5.青色袋は、慣行の白色袋と比較して、果皮の黄化を抑制し、緑黄色を維持することが可能で、
糖度低下はみられず、かすり症の発生を低減することから、最も優れている(表1、2、図1、2)。
1.青色袋を使用しても、日当たりのよい果房は果皮が黄化しやすく、かすり症も発生しやすいので注意する。
かすり症の対策
1.棚下が暗い園は、新梢の除去や摘心など新梢管理を7月中旬および8月中旬に実施して園内を明るくする。
2.生育期間中に天候不順が続く場合は、発生が多くなるため新梢管理を徹底する。
3.チャノキイロアザミウマに加害されると、かすり症に類似した症状となり被害が大きくなるため、薬剤散布による防除を徹底する(平成 22 年成果情報)。
かすり症は熟度が進むと発生する生理障害の側面が強いので、現在もっとも効果がある対策は青色の袋をかけることのようです。
対策
- カルシウムを施用(カルシウムの葉面散布)
- 一房当たりの粒数を減らすことで負担を減らす(35粒以下にして負担を減らす。)
- 樹全体の着果過多を防ぐ(カウンターで房数を確認して房数を抑制する)
- 環状剥皮により木の樹勢を弱める。
- 着色袋(青や緑)をつけることで軽減できる
- 6月~7月下旬にかけて摘心をして日当たりを良くする
- 光反射シートで光合成を促進させる
- 糖度が上昇してくると、かすり症が発生し易くなるので収穫時期を遅くしすぎないようにする
新梢管理(摘心)については下記の投稿で説明しています。
かすり症に似た症状のスリップス(チャノキイロアザミウマ)
‘ロザリオビアンコ’の“かすり症”(仮称)の被害は果面の微裂果によって発生する。
被害程度は褐点の数と大きさで異なる。
また、かすり症に近い症状である【チャノキイロアザミウマ=スリップス】対策として、光反射シートを設置することで飛来を防ぐことができます。
ちなみに『かすり症』と『チャノキイロアザミウマ=スリップス』との症状の違いを見分けるのはブドウの軸が茶色く変化しているかどうかです。
チャノキイロアザミウマ=スリップスでは虫害で軸が茶色く変化します。かすり症は軸の色は変わりません。
チャノキイロアザミウマの防除
- ダントツ水溶剤 4,000倍(前日まで)
- ディアナWDG 5,000倍(前日まで)
- モスピラン顆粒水溶剤 2,000倍(14日まで)
チャノキイロアザミウマはしっかりと袋かけをすれば侵入を防げます。
ブドウのかすり症|まとめ・参考資料
- 着果量を減らしつつ、1房あたりの粒数を制限する
- 光反射シートを設置して光合成を促進
- こまめに摘心をして房に養分を集める
- 青色の専用袋を使うことで「かすり症」の発生を減少できる。(糖度上昇しても黄変化抑制)
かすり症は結局の所、養分不足による結果です。ヨーロッパ系統のブドウは樹勢が強いため房数を多く成らせがちですが着果量には注意しましょう。
また似た症状を引き起こすチャノキイロアザミウマ対策としても光反射シートは有効です。なので一石二鳥の対策として光反射シートを設置しましょう。
かすり症の参考文献
かすり症対策の参考文献を紹介します。
参考文献
\ 発生を軽減できる青系袋/
\ 光合成を促進させる反射シート/
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